【2020円くまもとの旅】温泉の恵み 胃袋にも わいた温泉郷へ自転車で

西日本新聞 夕刊 佐藤 倫之

 阿蘇恵みの温泉に胃袋まで漬かりたい、と思った。

 新千円札の「顔」となる医学者、北里柴三郎の古里・熊本県小国町。中心部にある道の駅で自転車を借り、涌蓋山(わいたさん)のふもとにある、わいた温泉郷「豊礼の湯」へ。入浴前、温泉噴気を使った蒸し器に旬の食材を入れておき、湯上がりに熱々をいただく。小旅行ならぬ「小湯治」とでも言おうか。

 まずは食材調達。JA直売店などで骨付きの鶏肉、サトイモ、サツマイモ、タマネギを購入した。店員に相談したら「タマネギは皮付きのまま蒸しても、おいしいですよ」と教えてくれた。

 最初は道の駅からバスに乗ろうと思ったが、1日3往復しかなく、往復運賃は1040円。4時間500円の自転車を借りることにした。

 窓口担当者に驚かれた。「車だと15分ほどですが、かなりの坂が続きますよ?」

 「電動アシストも付いているから大丈夫でしょ」

 腹をすかせるにはいい運動とペダルをこぎ始めたが、やがてフラフラ。追い越していく車も不安そうに遠回りしていく。道のり約10キロ。正午すぎに出発し、1時間弱かかった。

 硫黄の香り漂う、乳白色の露天風呂に身を沈める。紅葉は終わったが、北里もめでた涌蓋山の山頂部は霧氷に覆われていた。絶景を眺めながら疲れも癒やされていく。

 ゴーッと湯気が噴き出す蒸し器から、ざるに入れた食材を取りだしていると、熊本市から訪れた同年配の女性3人と出会った。温泉熱を利用した暖かい休憩所で、一緒に食べることになった。

 女性たちも町内のスーパーで食材を購入したという。キャベツや肉まん、ソーセージまである。トロトロになった皮付きタマネギを勧めると、お返しがあった。

 聞けば、同じ病院の看護師仲間で、1人は夜勤明け。「熊本地震の時は大変だったでしょう」と水を向けると、「本震時は、EXILE(エグザイル)のダンスのような揺れ」「余震のたび、体の震えが止まらなかったもんね」。それぞれ自宅が被災し、後ろ髪を引かれる思いで病院に向かったという。

 自転車で坂を下り始めると、3人が高台から手を振り見送ってくれた。食べ切れなかった食材は持ち帰り、シチューでおいしくいただいた。 (佐藤倫之)

熊本総局が移転しました

熊本総局 移転先地図

西日本新聞熊本総局が移転しました。新しい総局は、熊本市中央区の熊本桜町バスターミナルに近い坪井川沿いです。電話、FAX番号も変更となりました。

▼移転先
住所 〒860―0805 熊本市中央区桜町2番17号第2甲斐田ビル9階
電話 096(323)1851
FAX 096(323)1853

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ