教員の働き方改革 多忙化は子どもの不利益に 教研集会シンポジウム

西日本新聞 くらし面 前田 英男 四宮 淳平

 教員の多忙化が止まらない。一人一人の子どもたちと真剣に向き合おうという姿勢も、積み重なる業務を前になえてくる。そうした現実は新たな人材確保の障害にもなっている。どうすれば健全な学校教育が実現できるのか。1月下旬、広島市で教員志望の学生や現役教員、保護者らが参加したシンポジウムが開かれ、教員の働き方改革について関係者の理解と連携の必要性が確認された。

 シンポジウムは、日教組第69次教育研究全国集会の特別分科会として開催。最初に教員を志している香川大3年の鈴木芽生さん(21)と大阪教育大4年の池上和輝さん(24)が、志望のきっかけや学校の実態に触れた感想などを語った。

 「3分で給食を食べ終わったと思ったら児童の給食指導にテストの丸付け。とにかく時間に追われている感じだった」。鈴木さんは教育実習先の学校で教師の姿に驚いた。日中は子どもと触れ合い、夜遅くまで会議。「頑張る姿を見てすごいなと思った。ただ自身の身を犠牲にしているとも感じた」と言う。

 池上さんがサポーターとして関わった小学校では、卒業式の飾り付けは全て教師が担っていた。「児童や保護者に手伝ってもらえないのだろうか」と思った一方で「業務の精選が一番だが、難しいなら教員を増やすしかないのではないか」とモヤモヤ感を抱いた。

 2人とも目指す教師像は小学校のころの担任。池上さんは子どもでも正しいと思うなら意見して変えることができることを学び、鈴木さんは抑え付けず、個性を大事にする教育の大切さを体感したという。

 「自分がやっていけるのか不安はある」と吐露した池上さんは今春から小学校で働く予定。鈴木さんは「現場で頑張っている先生はたくさんいる。先生だけではなく保護者、地域、全員で子どもを育てる社会になってほしい」と訴えた。

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 引き続き開かれたパネルディスカッションで、小学校教師の東千絵美さんは、来年度から始まる小学校での英語の教科化に不安を口にした。「英語の免許もないのに30秒の会話など求められる質は高い。それでも『できません』とは言えず頑張るしかない」

 高校教師の国光俊克さんは、義務教育に比べて比較的業務に余裕があるとされる高校の現場でも、長時間労働が慢性化している実態を報告。「残業が1カ月に80時間、100時間をオーバーする時もある。大学入試が変わり、高校入試も多様化してきた。生徒ごとに教える授業の推進など、これまでの労働条件や教員数でやっていくのはそもそも無理だ」と述べた。

 教員のそうした状況は子どもにも影響する。保護者の1人は「小5の子が学校に行けなくなった。話を聞くと、集合や給食、掃除で無言が求められ、先生にピリピリするものを感じて『怖い』と言っている」。学校の決まり事に不満を抱いても「先生から『学校は理不尽なことを学ぶ場でもある』と言われた。でも、おかしいことは変えていくことが大事。学校でもそういう文化が広がってほしい」と投げ掛けた。

 東さんは「当たり前にやってきたことが、本当に子どもや自分たちのためになっているのかを考えてこなかった」と反省し、「学校裁量で変えられることもある。何ができるか一つずつ確認したい」と話した。

 元参院議員で小学校教員だった神本美恵子さんも「誤字脱字を見るため通信簿を事前チェックすると教頭に言われたことがあるが、なら保護者から注意してもらえばいいと抵抗した。削っていける部分はある」。

 教員の業務量が増える要因の一つに保護者対応がある。2人の保護者は「保護者も先生も子どもも、フラットな関係を作り直せたらいい」「先生方もしんどかったら、しんどいと言ってほしい。私は手助けをしたい」と強調した。

 司会を務めた名古屋大大学院の内田良准教授は「先生が多忙な状況は子どもの不利益につながる。倒れそうな先生の相談に始まり、ついには保護者が一緒に考えましょうという時代がやってきた。この動きを持続可能にしないといけない」と締めくくった。 (四宮淳平、編集委員・前田英男)

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