発売40年、世界に5億個 ガンプラが愛される理由は 川口名人に聞いた

西日本新聞

 機動戦士ガンダムの放映40周年だった昨年が終わると同時に、またガンダムイヤーがやってきた。

 2020年7月、ガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」は発売から40周年を迎える。1980年代初頭のブームの後も新商品を出し続け、昨年4月には累計出荷数が5億個を突破。韓国を中心にアジアでも人気となり、現在は年間販売額の5割を海外が占めるほどだ。

 狭い話になるが、筆者が福岡のガンダムバーで会った20〜40代の多くが、ガンダムにのめりこんだきっかけを「ガンプラ」だと挙げていた。人気の根強さは肌でも感じる。

 ガンプラが発売される前、ファーストガンダムの放映時に「ザク」を自作し、バンダイに入社した後はガンプラの企画や広報などに25年近く携わり続けているのが「川口名人」こと川口克己さん(現BANDAI SPIRITSホビー事業部シニアアドバイザー)だ。
 
 ファンとして、仕事として、両方の立場でガンプラを支え続ける「ガンプラの兄貴分」に、40年にわたり支持される理由や発展のターニングポイント、将来展望を聞いた。(三重野諭)

◆北九州で育ってプラモの道へ

 川口名人は福岡県北九州市の出身。小4で東京に引っ越すまで門司区で過ごした。小学校低学年でキャラクターものの商品に出合ったのをきっかけに、プラモデル好きに。その背景には、北九州で育ったことが影響しているという。

 川口名人:昭和30年代の門司は都会と違ってそれほど遊ぶものがなかったですから、自分で作ってなんとかするのが当たり前でした。新聞紙を使って紙粘土を自作したり、絵を描いたり、友達と山で秘密基地を作ったり。小学校に入る前ぐらいから、工夫して何かを作るのが好きだったんです。九州の門司に住んでたからこそかもしれませんね。

 -機動戦士ガンダムのアニメを最初に見たときは高校生のとき。その印象は。

 第1話でザクが並んで宇宙空間から飛んできたときに、それまで知っていた「ロボットもの」とは違うと感じました。器用にスペースコロニーに入っていったので、全長2、3メートルぐらいの、人間が着る「パワードスーツ」ものみたいなイメージでしたが、対比物が出てきたときに、すごくデカい。中から人が降りてくる。「こんな巨大ロボットもので、ガチな戦争ものをやるんだ」というのが最初の印象ですよね。

 ストーリーも面白くて、毎週土曜日は家でテレビを見る。高3と思えないような生活になりました。その時はガンプラはまだ発売前で、なければ自分で作ればいいじゃん、と昔のような感覚で作ったのが高さ5センチぐらいのザク。最初に自作したガンダム関係の立体物です。

◆ガンプラには人の数だけ正解がある

 -バンダイ入社後は製品としてのガンプラに関わる側になった。ガンプラの魅力をあらためて。

 説明書を見ながらだと、初めて作る人でも完成させることができる。その時点でも一つ満足いただけるのですが、その先には自分だけの作品を作る余地があるのが、ガンプラ。

 僕はガンプラに限らず模型全般が好きなので、実在する船や飛行機、車や戦車といった「スケールもの」も作る。モビルスーツは実在しないけれども、スケールものを作った経験から、ザクは戦車みたいなイメージで作ろうとか、ガンダムは試作機だから飛行機みたいな仕上げにしよう、とか。

 誰かが決めることではなくて、自分が思う通りに作る――。自己表現できるのがプラモなんです。特にガンプラは架空のものだからこそ、自分の思いを出せる。人によって全く違う解釈になることもありますが、全部正解です。人の数だけ正解があるのがガンプラだと思います。

ガンダムベース福岡に飾られた川口名人作のガンプラ

 -ガンプラの旗艦店「ガンダムベース」の国内2か所目となる出店場所が福岡市のキャナルシティ博多だった。アジアからの訪日客を意識しての立地だと聞いたが、アジアでもガンプラが支持される理由は。

 国内でガンプラブームと言われていた1980年代、香港や台湾、韓国など比較的近い国や、日本人の駐在員が多いタイなどにはその情報が伝わっていました。だからオンタイムで楽しんだり、ガンダムに接する機会があったりしたアジアの方も多いんです。

 ガンプラを正式に海外販売するまで、その後20年ぐらいかかりました。だから発売時にはアジアにも「待ってました」というファンが多かったんです。「僕らにとっての最初のガンダム」という感覚でしょうか。

 ガンダムは日本のキャラクター、一つのブランドとして受け取ってもらえている部分もあるのでは。他の商品だと海外販売用にパッケージを変えることもありますが、ガンプラは日本版のままがいいというお客様の声が多かった。その点で、日本のブランドとして認識されていると捉えています。

ガンプラの説明書は日本語が読めなくても、アイコンで意味が通じる 

 一方で、海外展開を本格化する段階で、日本語が読めない方のために、説明書はなるべくアイコンで作業を視認できるように変更しました。特に近年は欧米での販売にも力を入れていますので、パッケージや説明書に英文表記も入れています。

日本語とともに英文が入ったガンプラのパッケージ 

 -入社前のプラモを手作りするような職人的な活動と、入社後に関わった「大量生産」との間でギャップはなかったのか。

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