「幻の新幹線」の出番か 岩本 誠也

西日本新聞 オピニオン面 岩本 誠也

 「うそから出たまこと」もありではないか。そんな思いで、九州新幹線西九州(長崎)ルートを巡る混乱の着地点を夢想している。

 うそとは、新幹線規格の施設の上に在来線のレールを敷いて走らせる「スーパー特急」のこと。列車が在来線に乗り入れできるメリットがあるが、実はこの世に存在しない幻の新幹線だ。財政難などで新幹線整備に逆風が吹く中、早く建設するための「方便」として使われてきた。

 その典型が九州新幹線鹿児島ルート。長大トンネルなどの難工事区間が多い新八代-鹿児島中央からスーパー特急方式で工事が始まり、区間延長を経て、最終的に全線フル規格で整備された。

 長崎ルートも先例にあやかるつもりだったのだろう。武雄温泉-諫早がスーパー特急方式で着工認可され、その後フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入を前提に、武雄温泉-長崎のフル規格整備が決まった。ところがJR九州がFGT導入を断念したことでシナリオが狂ってしまった。

 2022年度に開業予定の武雄温泉-長崎は66キロ。鹿児島ルートにならい、リレー方式で開業するという。

 長崎から新幹線で博多に向かっても20分前後で在来線に乗り換えなければならない。これでは、ゆっくり駅弁を食べる時間もない。全線フルを目指すなら、これに反対する佐賀県を説得し、新鳥栖-武雄温泉に新線ができるまで、通勤電車のようなせわしない状態が続くことになる。

 ならば武雄温泉-長崎に在来線幅のレールを敷設し、在来線と直通させた方がいいのではないか。そんな意見が出てきても不思議はない。これこそスーパー特急だ。

 最高速度200キロとされ、鹿児島ルートの260キロには及ばないとはいえ初代ひかり並み。フルと同じ軌間のミニ新幹線やフルのように追加の大型投資も要らない。

 長崎県は「すでにフル規格でレールを敷設中で、時速200キロで走る車両も存在しない」とスーパー特急には否定的だ。だが、レールは敷き直せばいいし、在来線幅でも時速200キロ超で走れる台車の開発については、かつて鉄道総合技術研究所とJR九州が共同研究し、技術的には一定のめどが付いているようだ。FGTのように構造が複雑ではないので、車両開発もそんなに難しいとは思えない。

 当面、スーパー特急を走らせ、将来的に佐賀県が同意し新線がつながったらフルに切り替えればいい。鹿児島ルートの成功体験に縛られ過ぎてはいけない。 (論説委員)

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ