ITに村おこし懸ける 大分・姫島、40年ぶり2社誘致 

西日本新聞 九州+ 坂本 公司

 自ら考え自ら行う地域づくり-。こんな理念を掲げて、1988~89年度、全国約3300の自治体に、人口規模を問わず、1億円が一律交付された。竹下登政権によるふるさと創生事業だ。九州各地の1億円は今どうなっているのか。安倍晋三政権が地方創生を進める令和の時代に考える。

 大分県の離島に、東京のIT(情報技術)企業がやって来た。2年前、「ブレーンネット」が、姫島村にサテライトオフィス(地方拠点)を開設した。企業進出は約40年ぶりだった。

 藤本昭夫村長(76)が同社を誘致しようと思ったのは、創業者の男性が妻の実家がある姫島へ移住したのがきっかけ。月数回上京しながら島を拠点に働く姿を見て、インターネットにつながる環境があれば場所を選ばない仕事があると知り、同社などに働き掛けた。

 村の基幹産業はクルマエビ養殖などの水産業だが、漁獲量の減少や担い手の高齢化などで衰退の危機にある。4千人を超えていた村の人口は2015年の国勢調査で2千人を割り、40年に1094人まで減るとの推計もある。企業誘致は、雇用確保への期待もあった。

 小学校の旧校舎をオフィスなどに改修し「姫島ITアイランドセンター」として整備。18年1月、IT企業2社が入り、Uターンした島出身者も働く。

 費用面で支えるのが、国の地方創生交付金だ。旧校舎の改修費用や企業が「お試し」で入れるコワーキングスペース(共同利用の仕事場)の追加整備などを賄った。「ITを島の新たな柱にしたい」。笑顔の藤本村長はこう付け加えた。「若者が出て行くのを、少しでも防がないと」。未来をこの道に懸けている。

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 周防灘に浮かぶ一島一村の姫島村。島に高校はなく、島外で就職する若者が多い。現在9期目、九州の現役首長として最長の35年間にわたり村のかじ取りを担う藤本村長は30年以上前、ふるさと創生事業の1億円をどう使うか、頭を悩ませた。

 90年、1億円の多くを使って、「若者宿」と称したログハウス風建物を造った。トレーニング室などを備え、主に青年団など島の若者たちが集まって語り合う場を目指した。年長者の家で若者がしきたりを教わるかつての島の風習が念頭にあった。だが、利用者は思ったほどいなかった。維持費だけがかかった。

 金の延べ棒や温泉掘削…。1億円を巡り、全国の自治体は知恵を絞った。批判されることもあった。藤本村長は「うちは若者のために使おうと思ったが、あんまりうまくいかなかった」と振り返る。

 若者宿は02年、公民館を役場庁舎に改修したのに伴い、代わりの公民館として再出発した。この窮余の策が奏功した。祭りの打ち合わせやカラオケ愛好会の集まりなどで、近年は年間延べ5600人の利用者がいるという。当初の見込みは外れたものの、幅広い世代が集い、にぎわいを生みだしている。 (坂本公司)

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