【2020円くまもとの旅】早起きの得は海の幸 熊本市の台所・田崎市場

西日本新聞 夕刊 長田 健吾

 「早起きは三文の得」を実感できる場所が熊本市にある。

 午前5時半。「サクラマチ クマモト」を出発。夜明け前の道を、愛車のペダルをせっせと踏む。

 30分後、人や車が慌ただしく行き交う場所が見えてきた。目的地の熊本地方卸売市場、通称「田崎市場」だ。ピー、ピー。笛の音に誘われ、市場の奥へ。帽子をかぶった男たちが、魚が入った箱を囲み野太い声を上げている。競りだ。熱気がすごい。

 田崎市場は1972年に開場。水産部と青果部の競り場がある市場で、熊本県内で取れた青果や九州近海の鮮魚が集まる。馬肉やからしれんこん、菓子の卸売店もあり、まさに熊本の台所だ。

 市場を一回りしたところで、おなかが減った。場内には市場関係者向けの飲食店がある。「せっかくなら魚を」と思い、「魚良」へ入る。

 店内には市場関係者とみられる男性が5人ほど。10種類ほどのメニューの中から、赤口の煮付け定食を注文した。身がふわふわで、ご飯がどんどん進む。絶品だ。驚くのは値段。午前9時まで日替わりメニューを含めた全ての定食が、なんと500円。

 午前7時20分。胃が満たされ外へ出ると、空が白々としてきた。家でも魚が食べたい。そう思いながら歩いていると、「鮮魚商 浅井」に着いた。家庭用に小売りする店の一つだ。

 店先の男性におそるおそる声を掛け、おまかせで刺し身を1500円分注文。「10分待って」と言われ、出てきたのは、天然のカンパチ、スズキ、マグロ、サーモン、ホタテ…。7種盛りがドーン。何かの間違いかと思い「本当に1500円ですか」と聞くと、店主の男性は「うちは卸値で出しているからね。4、5人分はあるよ」と笑う。

 年齢を聞かれ、25歳と答えると「東京にいる息子と近いよ。仕事、頑張ってね」と店主。働く男の顔は、別れ際には父親の顔に。外気は冷たいが、心はぽかぽかだ。

 午前8時。市場を出ると、すっかり青空。残金20円。欲望は満たされたので、迷わずコンビニの募金箱へ。刺し身が入ったビニール袋の重みを感じながら、自転車にまたがり、帰路に就く。諸説あるが、三文は現在の貨幣価値で100円程度らしい。早起きの得は三文どころではない。 (長田健吾)

熊本総局が移転しました

熊本総局 移転先地図

西日本新聞熊本総局が移転しました。新しい総局は、熊本市中央区の熊本桜町バスターミナルに近い坪井川沿いです。電話、FAX番号も変更となりました。

▼移転先
住所 〒860―0805 熊本市中央区桜町2番17号第2甲斐田ビル9階
電話 096(323)1851
FAX 096(323)1853

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ