真相究明遠く トランプ氏弾劾無罪 大統領選へ対立激化は必至

 【ワシントン田中伸幸】ウクライナ疑惑を巡るトランプ米大統領の弾劾裁判は想定通り無罪評決で決着した。疑惑を追及する野党民主党はトランプ氏を大統領再選のために外交を私物化した「独裁者」だと非難し、対するトランプ氏は自身の潔白を積極的に証明しようとはせず民主党をののしる。連日繰り広げられた攻防は泥仕合の様相を呈し、真相究明には程遠い。裁判は終わったが、11月の大統領選をにらんで双方が主張の正当性を唱え、対立を一層深めるのは必至だ。

トランプ氏

 権力乱用と議会妨害が問われた弾劾裁判で、トランプ氏側はいずれも大統領特権の範囲内で「犯罪ではない」と主張。「政権奪還を目指す民主党が、前回大統領選のトランプ氏の勝利を不当に覆そうとしている」との陰謀説も唱え、自身を政争の「被害者」と位置付けて徹底抗戦した。

 強硬姿勢が可能だったのは、評決を下す上院を与党共和党が支配しているからだ。共和党支持層の8~9割がトランプ氏を支持する現状の中、大統領選と同日実施の上院選で改選を控えてトランプ氏の人気頼みの議員も多い。共和党から有罪に必要な大量造反が出る可能性は事実上なかった。

 トランプ氏に対する同情から献金が大幅に増えるなど、一連の弾劾騒動によって支持者の結束が強まったことも大きい。裁判で問われたトランプ氏の行動も、熱烈な支持者たちは「トランプ氏は腐敗と闘うためには手段を選ばない」(中西部の60代女性教員)と意に介さなかった。

 とはいえトランプ氏のいら立ちは尋常でなかった。トランプ氏はツイッターの投稿などで連日、弾劾の動きを批判。米メディアによると、1月下旬には1日の投稿数が大統領就任後最多の142回を記録するなど汚名返上に躍起となった。

 トランプ氏は共和党の造反を防ぐだけでなく、民主党からも無罪票を得ようともくろんだ。だが、5日の評決で民主党は全員有罪に投票し、さらに共和党のロムニー上院議員が権力乱用について有罪に回った。過去の弾劾裁判で与党議員が有罪票を投じた例はない。トランプ氏には傷となった。

民主党

 「共和党議員も大統領の行動は間違っていると信じている」。民主党下院トップのペロシ議長は評決後、声明で指摘した。

 疑惑発覚当初、ペロシ氏は弾劾訴追には否定的だった。上院で有罪評決を得られる見込みがほぼなかったからだ。党内で勢いを増す左派の要求に押され、半ば追い込まれるように訴追に踏み切ったものの、疑惑解明の鍵を握るとみられたボルトン前大統領補佐官の証人招致に失敗するなど、民主党は最後まで決め手を欠き、拙速さが目立った。

 民主党は既に保守層を中心に、大統領の進退を問う最も重い政治的手続きである弾劾を「個人攻撃の手段に使い、政争を仕掛けた」と批判を浴びている。将来の大統領が野党から常に弾劾の危機にさらされる可能性を高めた点で、識者からは米国政治の一層の混迷を危ぶむ意見もある。

 トランプ氏の支持率は皮肉にも弾劾手続きが進むにつれて微増している。トランプ氏は「政争ばかりで何の政策も進めようとしない」と民主党批判をさらに強めるとみられる。

 一方で、ウクライナ疑惑を含め外交、内政両面で物議を醸し続けるトランプ氏に対し、若者を中心に「米国の恥を世界にさらしている」と怒りの声も大きい。

 民主党は今後も「史上3人目の弾劾訴追された大統領」としてトランプ氏を攻撃し、無罪評決は事実を隠蔽(いんぺい)した「灰色評決だ」と追及を続けるのは確実だ。さらなるスキャンダル探しにも乗り出しながら、大統領選という「最後の手段」でトランプ氏をホワイトハウスから追い出す機運を懸命に高めていくとみられる。

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