米大統領選 真の「偉大さ」が問われる

西日本新聞 オピニオン面

 米国は協調に背を向け、国内外の亀裂を深める道を歩み続けるのか。11月の本選に向けて事実上始まった大統領選挙では、トランプ大統領がひた走る自国中心主義の政治に国民が審判を下すことになる。

 トランプ政権下の3年で反移民や人種差別、不寛容といった風潮が強まり、米社会が古くから大切にし、世界の多くの国と共有してきた自由や平等といった価値観が揺らいでいる。トランプ氏の再選は、こうした流れを追認することになる。

 国際社会にとっても、米国が政治経済に与える影響は依然大きい。地球温暖化対応や中東政策で過去の積み重ねを無視するトランプ路線が加速するようでは混迷もさらに深まる。米国民の今回の選択を注視したい。

 トランプ氏は前回選挙時から刺激的な発言を連発し、旋風を巻き起こした。特に経済のグローバル化に取り残され、格差に苦しむ労働者らが既成政治に抱く不満をすくい取り、岩盤とも呼ばれる支持層を獲得した。

 トランプ政権誕生後の米国政治は、二大政党の党派対立激化も絡み、質が劣化していると言わざるを得ない。最近の分かりやすい例がトランプ氏が行った一般教書演説ウクライナ疑惑を巡る議会の弾劾裁判である。

 一般教書演説は再選を狙うトランプ氏が国家戦略をどう描くかに注目も集まった。国政の基本方針を示し国民に結束を呼び掛ける本来の趣旨から、内容はかけ離れていた。「米国は偉大だ」と繰り返し、堅調な経済など1期目3年の実績を並べ立て、野党民主党批判に終始した。

 大統領としての資質をただす格好の場だった弾劾裁判も、上院の多数を握る与党共和党が重要な証人招致を認めず、あっさりと無罪評決を出した。世論にらみの政治劇に終わってしまったと言える。疑惑の真相を解明して大統領をチェックするという責任を放棄したに等しい。

 与野党双方に望みたいのは、世界が「偉大」と認めうる米国のリーダー選びにふさわしい論戦である。トランプ氏の変化が難しいとすれば、まずは民主党がトランプ政治への有効な対抗軸を打ち出し、国民に浸透させられるかが焦点になる。

 民主党予備選では今、急進左派候補が富裕層や大企業の増税で格差是正を訴え、中道派候補は現実路線を唱える。その隔たりは大きい。この路線対立が残るままでは、前回選挙のクリントン氏のように本選での失速を繰り返しかねない。政治の知恵が試される局面だ。

 4年に1度の大統領選は米社会の変化を映し出す鏡ともいわれる。そうした兆候にも、私たちは目を凝らす必要がある。

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