肺炎拡大警鐘の医師感染死 中国当局がデマで処分、一転英雄視

 【北京・川原田健雄】中国で新型コロナウイルスによる肺炎発生が公表される前にいち早く警鐘を鳴らした湖北省武漢市の医師、李文亮氏(33)が7日、新型肺炎で死去した。李氏はデマを流したとして地元当局から処分されており、インターネット上では怒りの声が噴出。中国政府は一転、李氏を「英雄」扱いして事態の沈静化を図った。国内では言論統制を強める政府にも非難の声が上がっている。

 李氏ら8人は昨年12月30日、医師仲間のグループチャットで、原因不明の肺炎について「患者7人が重症急性呼吸器症候群(SARS)と確認された」と発信し、感染拡大に注意を呼び掛けた。地元公安当局は「デマで他人を混乱させた」として8人を摘発。李氏も訓戒処分を受けた。

 しかしその後、李氏の指摘通り感染が拡大したため、ネット上では当局の「情報隠し」を批判する声が噴出。肺炎に感染して隔離治療中だった李氏の死去が報じられると、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」には「警察が(李氏の)知識を尊重していればデマを流したとは言わなかったはずだ」「問題をうやむやにしてはいけない」など当局の責任を問う投稿が相次いだ。

 批判の声が高まる中、国家監察委員会は7日、李氏に関する調査チームを武漢へ派遣すると発表した。地元当局の対応に問題がなかったか調べるとみられる。国家衛生健康委員会の報道官は「(李氏に)深い哀悼と心からのお悔やみを申し上げる」とコメント。中国メディアも写真付きで「“白衣の戦士”の名誉ある一員」などと報じた。李氏の名誉回復を図り、市民の怒りが政府に向かないようにする狙いが透ける。

 習近平指導部は3日の会議で、肺炎への当局の対応に「欠点と不足」があったと認める異例の“反省”を表明したが、一部の知識人は共産党・政府批判を排除する習指導部の言論統制そのものを問題視する。

 中国の名門、清華大の許章潤教授は4日、ネット上に公表した文書の中で、習指導部がビッグデータや通信アプリを駆使した言論統制を強めた結果「社会に警鐘を鳴らす仕組みが失われた」と指摘。このため肺炎への対応が遅れ、感染拡大を阻止できなかったとした。

 許氏は天安門事件の再評価を求めるなどして昨年3月に停職処分を受けたが、文書では「怒れる人民はもう恐れない」と強調。新型肺炎の情報を隠蔽(いんぺい)するなどした当局の責任を追及すべきだと訴えた。

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