北九州市で30年ほど前、中学生がホームレスを襲う事件が起こった…

西日本新聞 オピニオン面

 北九州市で30年ほど前、中学生がホームレスを襲う事件が起こった。深夜の投石に始まり、ブロックを投げ込むまでエスカレート。相談を受けたのが現在はNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の理事長を務める奥田知志(ともし)さんだ

▼「許せない」と奥田さんがいきり立つと、泣きついてきたホームレスがなだめた。「あの中学生は家があって親がいても、心配してくれる人がいないんじゃないか。俺はホームレスだから、その気持ちが分かるけどなあ」

▼ホームレスとは家がない以上に心配してくれる人がいない、つまり無縁や孤立の人である。奥田さんは襲撃した中学生もある種のホームレスだと思い至り、困窮者支援で「関係」づくりを重視する原点になったそうだ

▼そんな奥田さんの抱樸が壮大な試みに挑む。北九州市の負の遺産、暴力団工藤会本部事務所の跡地に福祉拠点を建設。困窮者と障害者の就労支援や不登校の子の学習支援を行い、子ども食堂も開くという

▼中村哲さんと関わりのあった奥田さん。アフガニスタンでの壮大な活動を羨望(せんぼう)のまなざしで見ていたが、中村さんの突然の死に直面し「この悲しみを自分の生き方にどう生かすかが宿題」と痛感した。その答えがこの施設という

▼かつての恐怖の館をさまざまな境遇の人が「関係」を結び直す共生の城に再生する。志とはこうやって巡っていくものか。抱樸は土地代などで寄付を募っている。志を応援したい。

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