「歌の力」を扱っています シンガー・ソングライター 齊藤さっこさん

西日本新聞

 佐賀県鳥栖市出身のシンガー・ソングライター、齊藤さっこさんがアルバム「何のための音楽、間違いなくきみのための音楽」でメジャーデビューしました。全曲がシンプルなピアノの弾き語りですが、ハートフルな歌詞とメロディーが刺さります。アルバムに込めた思いを聞きました。

 -デビューアルバムは全曲、ピアノと歌の「一発録音」でした。

 ★齊藤 緊張しました。少しでも間違えるとやり直しですから。尋常じゃない集中力が必要でした。だけど私の場合、ピアノと歌と言葉は分離できない。境目がないので、このスタイルが一番好きです。

 -手応えは?

 ★齊藤 音だけじゃなく、その周りの空気も含めた立体的なものをレコーディングしたいと考えていました。このアルバムには、一発録音の集中力が入っていると思っています。

 -昨今は恋愛の歌が主流ですが、収録曲には「音楽って何?」と問い掛ける歌が目立ちます。

 ★齊藤 恋愛の歌はなかなか生まれてこないので。でも気にはなって、「(収録曲の)バランスが悪いな」と思うことも。友達にそのことを話したら、「一日中、音楽のこと考えているから当たり前だよね」と言われてしまいました。

 -1曲目の「音楽」が一番、齊藤さんの「音楽観」を表現しているのでは?

 ★齊藤 作家の大江健三郎さんのノンフィクション「ヒロシマ・ノート」がきっかけで生まれた曲です。この中の、被爆者の弱々しい声による訴えは誰も聞いていない、という場面が心に引っかかって。音楽は一個一個の弱々しい声を根こそぎ拾っていく力があるんじゃないか、と考えるようになったんです。歌うと気持ちがいい、だから歌いたい、ということも大事だけど、私は力をもつ「歌」を扱っていることを忘れないようにしたい。そんな思いで作りました。

 -収録曲は色とりどりです。トランプ大統領の差別的発言に問い掛ける「縁側で」はメッセージソング。喫茶店でのアルバイト体験を基にした「店長さん」はユニークだけど切ない歌。

 ★齊藤 これについて歌いたいというテーマみたいなものが頭の中にあって、それが早ければ瞬間的に、遅ければ何年かたって、ピアノを弾きながら言葉と歌がぱーっと出てくるんです。「店長さん」は2年くらい熟成しました。悩んでいることは、そのまま歌になります。子どものころ、世界は一つになるという教育を受けてきたけれど、今は分断の方に向かっている。私の価値観は古いのかなと思ったり、やっぱり違和感を持ったり。「縁側で」は、そんな悩みがベースになっています。

 -1年のライブ数は100本を超えるそうですね。

 ★齊藤 あんまり大きな所でやってないんですが、どのライブも面白かったですね。楽器はピアノなので、会場にあるものを使っているんですが、「1カ月に1回はメンテしてます」というグランドピアノを弾く時もあるし、古くて壊れてて鍵盤が戻ってこないようなもので演奏したこともあります。でも、あんまり考えないようにしています。ピアノのことを気にすると頭の中がピアノでいっぱいになっちゃうので。

 -ピアノとの出合いは?

 ★齊藤 佐賀・鳥栖にいた小さいころからピアノが友達でした。母がピアノを弾いていた影響です。日常的に楽譜がないところから弾き始め、後にクラシックのお稽古で楽譜を読んで弾くようになりました。今、ピアノの弾き語りをしているのは自然な流れです。それに子どものころからテレビやラジオに接してこなかったので、いわゆる流行の歌に触れたのは小学校の6年くらい。動いている光GENJIも見たことがありませんでした。

 -思い出に残る鳥栖の風景は?

 ★齊藤 中学、高校は家から自転車でJR鳥栖駅まで通っていたのですが、帰り道の途中、遠くにある九千部山を眺めていました。今でも山を見ると、ほっとします。

 (文と写真・塩田芳久)

 ▼さいとう・さっこ 1980年4月5日生まれ、佐賀県鳥栖市出身。ライブは8日に福岡県飯塚市、9日同県久留米市、10日長崎県佐世保市、11日佐賀市である。詳細はホームページ=https://www.saitou-sacco.com/live

関連記事