性依存症 社会復帰に支援と治療を

西日本新聞 オピニオン面

 痴漢や盗撮、強制わいせつといった犯罪につながる性依存症は精神疾患の一つとされる。「やめたくても、やめられない」と自己嫌悪に陥り、社会から疎外される者も少なくない。

 そんな悩みを抱える当事者の家族会が昨年12月、全国で初めて福岡市で発足した。たとえ自分の子どもでも、タブー視されがちな性に関する事柄だけに接し方が分からず、周囲にも偏見を恐れて相談できずに孤立してしまう場合もあるという。

 家族同士が率直に意見を交わし、的確な情報を得ることで、当事者を支え、社会復帰させる-。こうした家族会の動きが全国に広がり、性犯罪を減らす一助となることも期待したい。

 この問題の大前提として理解すべきは、性犯罪の被害者が心身に負う傷の大きさである。家族関係が破壊され、人生を台無しにされるケースすらある。

 にもかかわらず、性犯罪の背景にある性依存症の認知度は低く、専門の医療機関も少ない。

 性依存症は、適切なプログラムによる治療を続ければ、改善されることが確認されている。

 治療法も進化している。これまでは幼少期の被虐体験など、原因とみられる精神的な外傷の克服に重点が置かれた。最近は抗ホルモン剤など薬物投与に加え、自分の行動を律する計画的な療法が実践されている。満員電車を避けたり、携帯電話のカメラを破壊したりする内容だ。

 依存症の患者は当初、一定の行為により性的な満足感を得ることを求めても、時間の経過に伴いその行為自体が自尊心を回復する手段となることがある。

 このため専門家の指導に基づき、患者の欲求や特徴を細かく整理した上で、再犯のリスクに応じたプログラム作りが重要という。痴漢の再犯率は約30%とされるが、治療を受けた人は3%弱だったとのデータもある。

 性やアルコールへの依存症が影響した犯罪だけでなく、幅広い再犯防止を目指す新たな取り組みも本格化している。

 代表例に「治療的司法」がある。刑罰による犯罪抑止効果とは別に、再犯に及ぶ原因を取り除こうという手法だ。国内初の研究機関「治療的司法研究センター」が2017年、成城大(東京)に設立されている。

 被告が犯罪に至るまでの生活で抱えていた心理的、社会的な問題を分析し、その解決を通じて更生させていく裁判の取り組みだ。欧米には薬物乱用者に対する専門法廷の例もある。

 依存症は「脳の病」とも言われ、個人の意思のみで治すのは難しい。もちろん罪を犯せば罰せられるのは当然だ。立ち直りに効果的な環境整備を社会全体で急ぎたい。

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