ベトナム縦断1726キロ 「統一鉄道」全線制覇の旅

西日本新聞 夕刊 中原 岳

 日本と同様、南北に細長い国土を持つベトナム。かつて冷戦の影響で分断されていた北部の首都ハノイと南部の中心都市ホーチミンとを結ぶ鉄路が南北線、通称「統一鉄道」だ。その距離は博多-盛岡間よりも長い1726キロ。正月休みを利用して、この鉄道の全線制覇に挑んだ。所要時間は31時間25分。2泊3日の行程という。長い旅路には一体何があるのか。期待と不安にドキドキしながら、ハノイ発ホーチミン行きの夜行列車に乗り込んだ。

 午後10時、ハノイ駅。ホームには赤、白、青に塗られた列車が止まっていた。

 乗り込んだ寝台車は4人部屋。中を見て驚いた。ベッドには真っ白なシーツがしわもなく敷かれ、それぞれにスマホ充電用のUSBコンセントや読書灯が完備されていた。木目調のテーブルには造花が飾られ、バナナやミネラルウオーターが置いてあった。エアコンも適度に効き、過ごしやすい。ボロボロの車両をイメージしていたが、そんな先入観は早くも覆された。

 部屋で出発を待っていると、若い白人男性2人と30歳くらいのアジア系女性1人が入室し、全てのベッドが埋まった。まるで国際列車に乗っている気分だ。

 午後10時20分、列車は定刻にハノイ駅を出発した。大通りの踏切では無数のバイクが列車の通過を待ち、深夜になっても眠らない街の熱気が伝わってきた。市街地を抜けると、外はほぼ真っ暗。車窓を見飽きたところで、ベッドに入った。

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 外の明るさで目覚めた。列車は朝を迎え、田園や林が点在するのどかな風景の中を走っていた。

 同室のアジア系女性も起きた。話を聞いてみると、女性はタイ出身。別のベッドで寝ている2人はオランダ人で、自身の交際相手とその親友だという。3週間の冬休みを利用してベトナム中部のリゾート地ダナンへ向かう途中だとか。

 古都フエを過ぎると、左手に真っ青な南シナ海が広がった。列車は入り組んだ海岸線に沿って蛇行する。暇を持て余していた乗客たちも、窓の外を眺めたり、写真を撮ったりして列車の旅を楽しんでいた。

 難所のハイバン峠を越え、ダナンに到着。同室のカップルたちは「旅を楽しんでね」「安全な旅行を」と言いながら降りていった。片言の英語でも、ちょっとした交流ができれば、旅はぐんと楽しくなる。

 車内販売も楽しみの一つ。販売品目はジューシーなパイナップルや、甘くて少し濃い目のホットコーヒーなど実にさまざま。昼前や夕方には軽食を積んだワゴンが巡回する。ご飯とおかず3品、スープでお値段3万5千ドン(約166円)。自分の席で温かい食事に舌鼓を打った。

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 2回目の夜。とある駅で15分ほど停車したので、ホームに出てみた。立ち並ぶ売店の一つから店員の中年女性が手招きしている。行ってみると、釜いっぱいのご飯や魚の煮物、焼いた鶏肉などがずらり。店員は「さぁ、どれにする?」と言わんばかりに、パックにご飯を盛り始めた。

 実はつい1時間ほど前に、車内販売のご飯を食べたばかり。お腹はいっぱいだったが、もう後には引きにくい。水と缶ビールも勧められて購入。結局、2回目の晩ご飯を食べることになった。商魂のたくましさは、ここでも健在だった。

 3日目の午前5時45分、列車は終点のサイゴン駅(ホーチミン市)に着いた。遅れはなく、優秀なダイヤに脱帽した。ホームに降り立つ。行き止まりの進行方向の空が、赤く染まりだしていた。ホーチミンの暑い1日が始まろうとしていた。(中原岳)

【メモ】ハノイ、ホーチミンへは、福岡から直行便があるほか、台北などを経由しても行ける。統一鉄道の列車にはハノイ-ホーチミン間の直通便のほか、ハノイ-ダナン間などの区間便もある。ハノイからホーチミンまで利用した際の運賃・料金は、旅行会社の手数料を含めて、4人部屋の下段ベッドで約9500円だった。

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