新型肺炎には信頼度の高い情報で対応を 手洗いなどできる予防から 

西日本新聞 くらし面

 新局面 災害の時代―後悔しない備え❼

 新型コロナウイルスの感染が拡大した中国・武漢市から、邦人が日本政府のチャーター便で次々に帰国しました。さぞ不安だったと思います。感染者が複数判明していますが、過剰に反応しない、思いやりある日本社会でありますように。

 私も2006年、入り乱れる情報で不安を募らせてしまう体験をしました。インドネシアのスマトラ沖地震・津波の復興支援でジャカルタの日本大使館に赴任中、北スマトラ州で高病原性鳥インフルエンザウイルスが人から人へと感染し、死者が出たのです。

 この時、隣国のオーストラリアが世界保健機関(WHO)の職員として当地に派遣した医師が、亡くなった患者の検体をこっそり自国へ持ち帰ったのです。ワクチン開発が目的でした。

 インドネシアは激怒しました。以前から、先進国は途上国の不幸につけ込み高価なワクチンでもうけていると憤っていたからです。保健担当大臣は検体の提供に一切協力しなくなり、結局オーストラリアがワクチンを安価で提供することで政治決着が図られました。

 コロナウィルスを巡りWHOが当初、緊急事態宣言を見送ったのは中国の顔色を見たのだと私は考えています。まず、中国内でワクチン開発がどの程度進んでいるのかなど内部情報を得ようとしたのでしょう。へそを曲げられ情報が開示されないと、事態を悪化させてしまうとの判断です。

 WHOの思惑が何であれ、見えないウイルスに不安を覚えるのは自然なこと。でも、エボラ出血熱や鳥インフルエンザなどの人への感染が起きた国の致死率を、そのまま当てはめて恐れる必要はありません。衛生的で医療環境が整った日本では、発症しても的確な診療が受けられます。持病のある人や妊娠中の方は、いざというときにどうしたらよいか、かかりつけ医に聞いておきましょう。

 インフルエンザウイルスは高温多湿に弱いという、G・J・ハーパーの研究(1961年)が有名です。コロナウイルスに対しても、比較的暖かで雨の多い今冬の気候が抑制要因になるとよいのですが。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した2003年、WHOでインターンをしていた私は、トヨタ自動車のトップが危機管理のため情報収集に来られたのを目の当たりにしました。皆さんのリーダーも自ら確度の高い情報を得ようとしていますか。SNSなどには根拠不明の情報が出回りがち。皆さんもそれぞれ、信頼度の高い情報で身を守りましょう。

 健康面のリスクを一つでも減らすため、今からでもいいので、インフルエンザや風疹など他の感染症の予防接種をするのも賢明だと思います。手洗いなど予防のポイントを図にまとめましたのでご覧ください。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

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