数年待ちも…「医ケア児」一時預かり 利用に重い負担と葛藤

西日本新聞 夕刊佐賀版 梅本 邦明

医ケア児と生きる(2)

 激しい揺れに突然襲われ、佐賀県鳥栖市の自宅で就寝していた主婦の女性(41)は目を覚ました。

 2016年4月16日未明、熊本地震の本震が発生し、熊本市の実家が半壊した。親族を鳥栖市に避難させ、片付けを手伝うため急きょ、熊本に向かうことになった。

 気がかりなのは背骨の形成不全などの病気で下半身が不自由な長男(10)。家族が食事をミキサーで細かく砕いて食べさせ、尿道にカテーテルを入れて尿を出す導尿などの医療的ケア(医ケア)が必要だ。

 「被災地で導尿の場所やミキサーの電源は確保できるのか。衛生面の不安もある」。女性は療育医療センター「若楠療育園」(鳥栖市)に、長男の一時的な預け入れを相談した。この時は特別に許可が出て、熊本に行くことができた。「受け入れてもらい、本当にありがたかった」

   ◇    ◇

 医ケア児を施設で一時的に預かるなどして家族の負担を減らす「レスパイト支援」。冠婚葬祭やきょうだいの学校行事などの際に需要があるが、実施しているのは県内で数施設しかない。

 ただ、保護者は子どもから離れることに葛藤もある。女性は昨年から短期入所の利用を本格的に始め、空いた時間に長女(7)を焼き肉の外食に連れて行った。だが「慣れない場所で長男は寂しがっているだろう。私たちだけがはしゃいでいいのか」と、心の底から楽しむことはできなかった。

 それでも長男の将来を考えて利用を継続。「親の身に万が一のことが起きるかもしれない。自宅以外の場所で他の人と一緒に生活できる環境を今からつくっておきたい」と話す。

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 そんなレスパイト支援だが、対応する施設は飽和状態だ。若楠療育園は障害児13人、障害者45人と短期入所を契約。一方、契約の待機者は41人で、中には数年も待っている人もいる。「緊急時への対応や感染症予防など、安全に受けられる体制が整わないと新規の契約は難しい」と同施設。

 人員を配置しても利用者が急に体調を崩してキャンセルすることもあり、採算を取るのは難しい。家族からおむつの当て方や下着交換のタイミングを巡って苦情を言われるなど現場の苦労もあり、県内での支援施設は拡大しない。

 ケースワーカーの松田真由美さん(37)は「障害の程度や医ケアの内容は多岐にわたる。一定の物差しで測らずに人員配置を評価し、報酬が加算されるような仕組みづくりが必要」と訴える。(梅本邦明)

【佐賀県のレスパイト支援事業】人工呼吸器の装着、小児慢性特定疾病医療の受給者証を持っている-などの条件を満たす子どもの家族が対象。県が委託契約する訪問看護ステーションから看護師が自宅に派遣される。利用料は1時間当たり最大250円(看護師の交通費は利用者が負担)で、看護師が子どもの医療的ケアや見守りをする。1日最大4時間、年間48時間まで利用できる。

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