アイドル編<451>桑江知子(上)

西日本新聞 夕刊

 <大空を駆け抜ける 希望の光見つめ 夢を語り 風に吹かれ みんなで歩いてゆこうよ…> 

 「Seize the wind~風をつかめ~」。福岡市早良区の福岡講倫館高校の校歌である。講倫館高は2005年、西福岡高から改称し、新しい一歩を踏み出した。その節目に校歌も一新することになった。 

 「誰に依頼しようか」 

 当時、教諭で現在、同窓会「樟風会」の常務理事、小石原幸三(70)たちが校長を交えて話し合った。白羽の矢が立ったのは同校の卒業生で「私のハートはストップモーション」(1979年)などのヒット曲がある桑江知子だった。小石原たちは千葉県松戸市のライブ会場に顔を出し、桑江に言った。 

 「自由に、自分の世界観で書いてください」 

 桑江は一瞬、たじろいだが、引き受けることにした。当時、桑江は生まれ故郷・沖縄の伝統音楽を取り入れた世界と向き合っていた。13年ぶりのアルバム「月詠(ちちゆ)み間(ま)」をリリースしたばかりだった。また、本格的にシンガー・ソングライターとして幅を広げようともしていた。講倫館高だけでなく、桑江もまた、転機を迎えていた時期だった。 

   ×    × 

 桑江は同校を卒業して30年近くたっていたので福岡に取材へ行った。小石原が案内した。桑江はこのように語った。 

 「校内を歩き回ったり、通学路でもある室見川の遊歩道を歩いてみたりしてイメージを広げ、帰京してから書き上げました」 

 桑江が作詞、作曲した校歌はある意味、それまでの伝統的な校歌とは違った。校歌には周辺の山川や歴史、そして高校名が盛り込まれることが多い。桑江の作詞には高校名がなく、土地の固有名詞は「背振の山脈のように」と、わずかに「背振」が顔を出すだけだ。曲調もスローバラードだ。小石原は言う。 

 「最初に聴いたときは少し驚きましたが、新しい時代の流れに合った曲だと思いました」 

 校歌のお披露目として母校の体育館で歌った。それ以前にも母校でコンサートを行っている。桑江は2012年の同窓会誌に「私の自慢は母校の校歌」として寄稿している。 

 「私の歌手生活の中で自信となり、これからの人生においては励みになっていくと思います」 

 この校歌は入学式、卒業式など様々な場で後輩たちが歌い続けている。 

 桑江は1978年の卒業式の3日後、歌手を目指して上京した。 =敬称略 

  (田代俊一郎)

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