仮設退去、遠のく見守り 熊本地震 884世帯「支援受けていない」 (2ページ目)

重なる転居に高齢者負担重く 体調異変、車いす生活に

 熊本地震で熊本県益城町の自宅が全壊した平田栄子さん(77)は、みなし仮設住宅を退去後、体調を崩した。地震前は趣味の手芸のために電動自転車で遠出するほど行動的だったが、今は高齢者施設で車いす生活を送る。左手はほとんど曲がらなくなり、体重は1年で20キロ近く減少。「ストレスがたまったのかしら」と昨年4月に起きた体の異変を振り返る。

 約30年前に夫を亡くした平田さん。被災後、同県八代市のみなし仮設住宅に入居。2018年春、次男が購入した同県芦北町の一戸建てに移り住んだ。見知らぬ土地での新生活は、近所付き合いで嫌な思いはなかったが、知り合いもおらず心細さは増した。衣料品店も遠く、手芸の時間も減った。

 昨年4月中旬、突然体が動かなくなった。助けを呼べぬまま、倒れて3日目。首に下げていた携帯電話が何度も鳴った。仮設入居時から見守ってくれていた益城町の地域支え合いセンター支援員からだった。必死に電話を取り「動けないんです」と伝えた。救急車が駆け付け、入院。医師から「発見があと2日遅かったら亡くなっていましたよ」と言われたという。

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 東日本大震災の被災地では、災害公営住宅での孤独死や、度重なる転居のストレスで体調を崩す「リロケーションダメージ」が問題化してきた。

 国も仮設退去後の支援強化に動きだした。昨年4月には、西日本豪雨など相次ぐ大災害を受け、「被災者見守り・相談支援事業」をスタート。仮設入居者に限定せず、地域支え合いセンターが訪問・見守り支援をできるようにした。

 平田さんは5カ月間の入院後、施設に入所した。外泊できる状態になく、一度も自宅に帰っていない。「いずれは戻りたいけど…先のことは分からない」

 一本の電話で平田さんを救った支援員は強調する。「生活が落ち着くまでは見守りが必要だ。仮設を退去しても、すぐに既存の制度につなげるほど簡単ではない」 (壇知里)

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