あす213は何の日? 岩田 直仁

西日本新聞 オピニオン面 岩田 直仁

 11月22日は「いい夫婦の日」で、2月22日は「猫の日」。あすから2月13日も新しい記念日になる。213で「兄さんの日」…。ではない。

 文化庁が認定する日本遺産という制度がある。2015年に始まり、件数は全国で80を超えたが、認知度はいまひとつ。そこで関心を高めるため、今年から「日本遺産の日」を設けることになった。

 ユネスコの世界遺産の主眼は「保存」にある。一方、日本版の目的は「活用」。16年には、安倍晋三首相が議長を務めた観光ビジョン構想会議が文化財の観光活用を打ち出した。続いて、文化財保護法が改正され、自治体による活用が円滑になった。文化財行政を教育委員会から首長部局に移し、観光振興と連動させる自治体も現れている。

 観光利用を急ぐあまり、活用に慎重な学芸員を「がん」と表現した地方創生担当相が批判される一幕はあったものの、文化財行政は活用重視へと変わりつつある。

 この変化の起点はおそらく、大きな経済効果をもたらした世界遺産の登場だ。「文化財で稼げることを、世界遺産が教えてくれた」とある博物館学芸員は語る。もちろん皮肉だが、口調には自戒の気配も交じる。保護法は改正前から、その目的に「保存」と「活用」が明記されているが、施策の比重は前者にあり、バランスを欠いているという批判は以前からあった。

 活用に力を入れるのはよい。だが、経済効果を優先するあまり、保存が後手に回る懸念は捨てきれない。地方では活用どころか、保存に当たる人材不足に悩む自治体は珍しくない。地味で「稼げない」遺跡や文化財を軽視する風潮が広がる恐れもある。

 「負の遺産」とも呼ばれる戦争遺跡の多くは今、損壊の危機にある。

 先日、熊本県錦町の海軍航空基地跡をテーマに、戦争遺跡の保存・活用を考えるシンポジウムが福岡市であった。資料館を開設し、地下に掘られた基地施設跡のガイドツアーも実施する錦町の試みが紹介され、共感を呼んだ。

 歴史を伝える教育や訪れる人との交流、その土地の伝統や文化に対する愛着や誇りを育むことも立派な活用だ。

 ちなみに、2月13日には金融庁が先に「NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)の日」を設定している。お金のことはとても大切。それは国も自治体も同じだが、「稼ぐ」ことが文化財行政の第1目標ではない。視野を広げ、保存と活用の連動を考えたい。有形無形の「利益」はきっと自然に生まれてくるはずだ。 (論説委員)

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