日鉄高炉削減 「地元」の痛みを和らげよ

西日本新聞 オピニオン面

 国内最大の鉄鋼メーカーである日本製鉄が子会社を含めた生産能力の大幅削減に踏み切る。国内の需要低迷や海外勢との競争激化、設備の老朽化を踏まえた経営判断で、生産能力削減としては過去最大の規模だ。

 日本経済をけん引してきた鉄鋼業界の地盤沈下は深刻で、国内の粗鋼生産は5年連続で減少し、2019年は10年ぶりに1億トンを割り込んだ。今回の削減でも生産能力の過剰感は解消されそうもなく、競合他社も抜本的な経営合理化を迫られる可能性がある。日本の製造業全体への影響も小さくない。

 鉄鋼業の合理化は、全国各地に展開する製造拠点の地元経済や雇用にも大きな打撃となる。日本製鉄には今回の合理化に当たって、地元自治体や取引先、協力企業への説明を尽くし、雇用確保などに全力を挙げることをまず求めたい。

 日本製鉄は世界3位の鉄鋼メーカーだ。合併を重ね生産設備の合理化にこれまでも取り組んできたが、今回の計画は一段と踏み込んだ内容になっている。

 鉄鉱石から鉄を作る高炉を現在の15基から11基に減らし、粗鋼生産能力を年約500万トン削減する。中でも高炉を2基持つ子会社、日鉄日新製鋼呉製鉄所(広島県呉市)の全面閉鎖が含まれている点が注目される。高炉がある生産拠点の閉鎖は初めてといい、それだけ強い危機感の表れだろう。

 呉製鉄所は社員千人で、協力会社を含めて3千人以上が働いている。地元経済への打撃は避けられず、既に広島県が緊急対策本部を立ち上げるなど波紋が広がっている。

 日本製鉄は今回の合理化に関係する社員1600人は配置転換などで対応し、雇用は維持するとしている。会社の都合を無理強いすることのないよう、社員一人一人に配慮すべきだ。

 九州も無風ではない。今回の合理化では計9拠点で生産設備の新たな休止や休止の前倒しが盛り込まれた。北九州市の八幡製鉄所小倉地区の高炉休止が半年前倒しされ、9月末めどに旧住友金属工業小倉製鉄所から高炉の火が消えることになる。

 さらに4月1日付で16拠点の製鉄所組織を6製鉄所に統合・再編し、八幡と大分の2製鉄所は九州製鉄所に束ねられる。

 日本製鉄は今後の経営動向によって、さらなる合理化策を探る可能性を否定していない。

 官営製鉄の歴史を持つ「八幡」とはいえ、特別扱いは望めそうもない状況だ。北九州市はかつて「鉄冷え」に苦しんだ経験を持つ。製鉄所は今なお多くの雇用と取引先を抱えるが、地元としては製鉄所依存から脱却する取り組みも心掛けたい。

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