離職する人も…高い要望の医ケア、学校看護師の戸惑いや不安

西日本新聞 夕刊佐賀版 梅本 邦明

医ケア児と生きる(4)

 昼食時間の午後0時半ごろ。佐賀市の金立特別支援学校に勤務する看護師たちは慌ただしさを増す。

 医療的ケア(医ケア)が必要な児童・生徒19人が在籍する同校には、非常勤の看護師9人が配置されている。2019年度から働く看護師の女性(33)もその一人。医ケアが集中する昼は胃ろうからの栄養剤注入や、たんの吸引に追われる。

 看護師歴13年目。小児医療の経験はあるが学校での勤務は初めて。「医療機関では医師に相談できたが、ここでは自分で判断が必要」。看護師長のような意見のまとめ役はいない。

 医ケア児は家庭ごとにケアの手順や医療機器が異なる。看護師はマニュアルに従うが「家庭でのケアを学校で忠実に再現するのはほぼ不可能」(同校)だ。

 医ケア児を教室で見守る女性は授業中、児童の喉から「ゴロゴロ」と音が聞こえたため、たんの吸引をしようとした。だが教員が「大丈夫ですよ」と制したため様子を見た。「教員と意見が食い違い、不安になることもある。授業をどこまで優先するのか分からず、ケアのタイミングに迷う」と悩みを打ち明けた。

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 同校は04年3月、佐賀県内の特別支援学校で初めて医ケアを始めた。医ケア児は毎年14~21人とほぼ横ばいで推移。一方、当初4人だった看護師は約2倍に増えた。

 「子どもは重症化し、ケアが多岐にわたるようになった。看護師は日々戸惑いや不安を感じている」。看護師の勤務シフトを決め、保護者らの相談に応じる中学部教諭の高柳祐子さん(49)はこう話す。

 看護師9人のうち4人は19年度からの勤務。18年度で辞めた看護師の中には「ケアを巡る保護者の要望が高い上、ヒヤリ・ハットが続いて自信をなくし、職を離れてしまった人もいる」(高柳さん)という。

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 看護師の負担を減らすため同校は昨年7月、医ケア児を6グループに分け、看護師が同じグループを2週続けて担当するように決めた。高柳さんによると「その前は毎日担当が変わっていた。子どもの変調に気付きにくく、ケアの技術も覚えにくかった」という。

 さらに昼食時間に数人の医ケア児を集めて、看護師同士が技術を伝え合う部屋「ケアルーム」を19年度から設置した。

 佐賀大医学部看護学科の鈴木智恵子教授(小児看護学)は指摘する。「特別支援学校の看護師は意見を上げにくい。看護師と教員の役割を明確にし、看護師への教育体制を整えるべきだ」

(梅本邦明)

【特別支援学校】佐賀県内に県立特別支援学校は10校あり、うち5校が医ケアを実施する。医ケアが必要な児童・生徒は全体で44人(昨年5月時点)が在籍し、非常勤職員として看護師23人が配置されている。校内での医ケアは看護師に限られ、教員はできない。県教育委員会特別支援教育室は「より安全、安心を確実にするため」としている。

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