「奇跡が起こるかも」  連載・霹靂の日々【12】大島一樹

西日本新聞 くらし面

 一般病棟に移る前、救命救急センターでもう一つ、印象に残ったやりとりがあります。当時、私は一度傷ついた脳細胞は回復しないと認識していたものの、傷ついた細胞の代わりを他の細胞が担うケースもある、という話も聞いたことがありました。

 医師に尋ねると、それは「脳の可塑性」と言われるもの。しかし「子どもなど成長段階の場合、脳の一部が傷ついても、他の部分が代わりの機能を持つこともあります。ただオクサンの場合、年齢から考えてそれは難しいでしょう」-。

 それ以上の詳しい説明はありませんでしたし、私自身もそれ以上は聞きませんでしたが、私には、日々を過ごす希望のきっかけになったことは確か。

 事故や病気などで、脳の一部や大半に傷を負った方、あるいは植物状態からでも回復した、というさまざまな体験談は、私や子どもたちにとっては「宝」でしたし、すがっていたい情報でした。重篤なくも膜下出血から元気になった、という話も聞くたびに、光明と感じたものです。

 人はやはり希望がないと、さまざまなことに耐えられないと思います。「これ以上は無理」より「奇跡が起こるかも」。どんな家族にとっても、大切な言葉ではないでしょうか。

 日々進歩している医療や科学の情報を見聞きするにつけ、奇跡が奇跡でなくなるのも不思議ではないと信じています。 (音楽プロデューサー、佐賀県みやき町)

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