いざ60年前の日本へ! 新書サイズのタイムマシンでひとっ飛び

西日本新聞

 1956年、一人のアメリカ人青年が、駐留米軍軍属として初めて日本の土を踏んだ。その後、日本で暮らすことになった彼は、地図と時刻表、そして当時きわめて貴重だったカラーフィルムとカメラを携えて、日本各地を旅するようになる。その時々に撮られた写真が、半世紀以上の歳月をこえ、コンパクトな写真集としてまとめられた。『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』。本書はその反響に応えて作られた続編である。 
 
 鉄道員の父を持ち、自身も現在、JR東日本国際事業本部顧問をつとめる著者の写真の多くは、鉄道写真である。だが、本書を楽しむために鉄道ファンである必要は全くない。収められている写真はすべて、前回の東京オリンピック以前に撮られたもの。人々の足として活躍していたのは、まだまだ自家用車ではなく鉄道だった。しかも街中にも路面電車が走っていた。つまり、列車を撮れば、そのまま時代の雰囲気や人々の暮らしぶりが映し出される時代だったのである。
 
 当時を知らない読者としては、まず現代との違いに目が向く。当然、ファストファッションのファの字も存在しない頃だ。ベレー帽を被っている男性は珍しくないし、着物姿で街を歩く女性たちの姿も目立つ。バイクのヘルメット着用が義務付けられる前だから、若者は何ら悪びれる様子もなくノーヘルで飛ばしているし、エアコンも普及していないから、夏は車両の窓が全開だ。街を賑やかに彩る看板も興味深い。なかには「平和原子力羊羹(ようかん)」なんていうパンチの効いた広告も登場する。

 九州の写真も豊富だ。天神や中洲の通りには路面電車が我が物顔で走り、高度経済成長期の日本を支えた八幡製鉄所(現・九州製鉄所八幡地区)では、もうもうと煙を吐き出す煙突の足元を、こちらも負けじと白煙を噴き上げて蒸気機関車が疾走してゆく。

 一方で変わらないものもある。出雲大社や清水寺などの神社仏閣、そして富士山。国会議事堂については中身も、と言っては乱暴すぎるだろうか。

 新書サイズに544点の写真がはち切れんばかりに収められている。しかも全てカラーというのがうれしい。現在と同じく東京オリンピックを控えた時期でありながら、現在とは真逆の上り調子だった日本。その姿を知る上で、絶好のタイムマシンと言えるだろう。

 

出版社:光文社
書名:続・カラー写真で味わう60年前の東京・日本
著者名:J・ウォーリー・ヒギンズ
定価(税込):1,760円
税別価格:1,600円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334044503

西日本新聞 読書案内編集部

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