2020年代、過疎地が日本を変える。

西日本新聞

 過疎地のイメージを一変させる一冊である。過疎地こそ、イケていて、最先端。そんな風にメディアで取り上げられる日も遠くはないだろう。未来への可能性なら、東京はもちろん、ニューヨークやシリコンバレーだってかなわない。そんな確信さえ抱かせてくれる。そして、そのカギとなるのが、本書のテーマである「小さな拠点」だ。

 小さな拠点とは何か? 簡単に言うと、生活に必要なサービスへのアクセスが困難な過疎地域において、教育、商業、医療、福祉などのサービスを受けられる施設や機能を集約した場所のことである。具体的には、小学校の空きスペースを使ってデイサービスを実施したり、コンビニに小さな図書館を併設したりといった取り組みも該当する。とはいえ、これだけではその魅力の半分も説明したことにはならない。

 小さな拠点において重要なキーワードが「合わせ技」である。名前の通り、小さな拠点は「小さく」あることが重要であり、決して機能フル装備の「大きな」拠点は目指さない。つまり、従来のビジネスでお馴染みの大規模・集中型ではなく、周辺地域の小さな拠点ともつながりを持つ、小規模・分散型モデルなのだ。

 「合わせ技」は輸送、エネルギー利用、収益化などにも及ぶ。たとえば、新聞配達や野菜の出荷、デイサービスの送迎は、別々にではなく同じ車で時間をずらして行う。その車には、ガソリンではなく地域資源を活用した電力を使う。収益は、施設単体ではなく、拠点や地域全体の連結決算で黒字化を図る。そうすれば、スーパーマーケットや名産品など物販の売上で、高齢者介護などのサービスを維持していくこともできる。

 そう、小さな拠点は、単に過疎対策のためではなく、2020年代に本格化すると言われている「再生可能エネルギー革命」「シェアリングエコノミー革命」「IoT革命」をも見据えた、持続可能な循環型社会の起点となるべき取り組みでもあるのだ。

 こうした取り組みに対して、「理想主義」あるいは「夢物語」などと冷笑を浴びせるのはたやすい。だが一度でも本書に目を通してみれば、その考えは覆されるだろう。課題は真摯に受け止めつつ、仕組みづくりやワークショップの進め方といった実践的なノウハウ、高知県を始めとする各地での取り組みや成功例も紹介されている。過疎の問題だけでなく、未来を少しでも良くしたいと考える全ての人を勇気づける一冊だ。

 

出版社:農文協
書名:「小さな拠点」をつくる
著者名:藤山浩 編著
定価(税込):2,860円
税別価格:2,600円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54017106/

西日本新聞 読書案内編集部

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