武漢から発信続ける邦人教授 津田賢一さん「同僚残し帰国できない」

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】新型肺炎が猛威を振るう中国・武漢市から大半の在留邦人が帰国した今も、現地にとどまり続ける日本人がいる。同市内の大学で教授を務める津田賢一さん(44)だ。電話取材に応じた津田さんは「中国人の同僚を残して帰国できない」と強調。現地の様子を伝えるツイッターの投稿が中傷されたこともあるが、「地道に自分のできることを続けたい」と発信し続けている。

 北海道大大学院で博士号を取得した津田さんは植物免疫学が専門。米国やドイツの研究所を経て昨年9月に武漢市の華中農業大教授に就任した。学生の指導を本格化しようとした矢先に新型肺炎が拡大した。

 武漢在住の日本人の多くは政府チャーター機で帰国したが、津田さんは「中国人が困っているのに自分だけ帰れない。学生が研究に使う植物の世話もしないといけない」と残った。

 新型コロナウイルスが発生したとみられる海鮮市場から約10キロ離れた大学内の教員住宅に住み、1月下旬以降は学外に出ていない。常にマスクを着用し学内の食堂やスーパーを利用。出前は控えている。

 大半の学生は春節に合わせて帰省したままで、大学の出入りは厳しく制限されるが、今月に入って学内でも感染者が出たという。スーパーに米や肉がほとんどない日もある。環境は厳しさを増しているが「不安は感じない。なるようにしかならない」と授業再開に向けて準備を進める。

 津田さんは従来、研究の情報発信のためツイッターを利用してきたが、肺炎拡大以降は武漢で暮らす自らの状況も書き込んでいる。思わぬ反応があったのは、武漢市が封鎖された直後の1月下旬。まだ物資が豊富にあった当時の学内スーパーについて「新鮮な食料もあり、特に混雑、混乱はなかった」と投稿したところ、「封鎖されている都市にどこから運ぶのか」「違和感がある」「中国の大学に勤務している人の言うことは話半分でいい。言わされている可能性もある」などの批判が相次いだ。

 「見たことを書いただけなのにうそつき呼ばわりされた。何でこんな反応か理解できなかった」。嫌気が差した津田さんはツイッターを一時やめたが、「情報に感謝している」との投稿も複数あったと友人に知らされた。「悪意のある人は一部」と思い直し、投稿を再開。日中のメディアが武漢に残った津田さんの行動を報じたこともあり、ツイッター上の批判は収まった。

 津田さんには世界中の中国人から「(武漢残留に)感動した」というメールが連日届く。「他人の不幸せな様子を見るのが嫌なだけ。日本人が残ると言うと中国人は本当に喜んでくれる。少しでも日本と中国の懸け橋になれればと思う」

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