頭痛と嘔吐で倒れたことも…医ケア、専門員いないと「生活がパンク」

西日本新聞 夕刊佐賀版 梅本 邦明

医ケア児と生きる(5)

 「めいちゃーん、体調はどう?」。佐賀市東与賀町の塚原芽衣さん(9)は、自宅のベッドで右手を握られ、聞き慣れた声に表情を緩めた。

 声の主は障害児・者の福祉サービスの利用計画を作成する相談支援専門員の林田五月さん(35)。家族構成や生活環境に合わせてヘルパーなどの日程を組む。

 芽衣さんは2017年、自身の免疫が脳を攻撃する病気になった。両腕はわずかに動くが目が不自由になった。入院治療の後に退院し、家族がたんの吸引や、胃ろうからの栄養注入など医療的ケア(医ケア)に当たっている。

 林田さんは定期的に芽衣さんの元を訪れ、生活や体調の変化、必要な支援を確認する。母絵美里さん(34)は「困り事の解決の糸口を探してくれる。専門員がいなければ生活がパンクしてしまう」と話す。

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 芽衣さんの医ケアが始まったのは18年2月。当初は絵美里さんが利用計画を立てていた。医ケア、下のきょうだい2人の育児、そして家事に追われて「毎日が騒がしく、運動会のような状態」だった。

 そんな中で福祉用具を探し、訪問看護ステーションや保健福祉事務所に連絡を取る。「支援制度も何も分からない。在宅の相談先はどこなの」。栄養ドリンクだけで数日間を過ごし、頭痛と嘔吐(おうと)で倒れてしまったこともあった。

 市に相談したところ、障害福祉サービス利用の申請を提案され、18年7月から林田さんが計画を担当することになった。絵美里さんは「心が軽くなり、きょうだいと接する時間も増えた」と感謝した。一方で「退院前のもっと早い段階から専門員の存在を知っておきたかった」とも訴えた。

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 ただ、相談支援専門員もなり手が不足している。佐賀県相談支援ネットワーク協会によると、県内には推計で約150人。1人当たりが担当する障害児・者は平均約70人と多く、広域に対応しなければならない。

 協会事務局の村岡智紀さん(44)は「利用者1人の報酬は年5~6万円と少なく、事業の成立が厳しい。さらに職業の知名度も低い」と指摘。「専門員が見つからず、福祉サービスを受けられない待機者もいる」という。

 林田さんは多い時で100人以上を担当。学校やスーパー、病院などの土地勘がない地域にも行かなければならず、計画の立案に悩んだ。「子どもと家族がお互いのために犠牲になってはいけない。専門員のなり手が増えてほしい」。林田さんの切なる思いだ。 (梅本邦明)

【相談支援専門員】障害児・者が病院から自宅に移行する際、本人や家族の生活スタイルに合わせて障害福祉サービスをつなぐ役割を果たす。資格取得には研修や福祉現場での勤務経験などが必要。佐賀県内には約90の相談支援事業所がある。県相談支援ネットワーク協会には34事業所、専門員106人が加盟する。

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