新型肺炎拡大 検査医療の体制整備急げ

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスの感染が国内でも広がり始め、肺炎を発症し死亡する人も出た。政府は品薄が続くマスクの増産支援などの緊急対策を打ち出したが、国内は既に流行状態にあるとの前提で、さらなる対応を急ぐべきだ。

 国内初の死亡者となったのは神奈川県在住の80代女性だ。女性の親族で東京都内の個人タクシー運転手や、和歌山県内の病院の医師などにも感染が確認されている。医療従事者の感染はこれが初となる。

 厚生労働省が把握している感染者には、直近の海外渡航歴がない人がいる。国内での二次感染、三次感染が進んでいると考えるべきだ。当面は感染経路の追跡と並行して、新たに感染が確認された人と接触した人たちの検査を急ぐ必要がある。

 中国では湖北省を中心に感染が広がり続けている。感染者・死者数ともに、やはりコロナウイルスが原因で2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回った。

 新型ウイルスはSARSに比べるといまのところ致死率は低く、毒性は弱いとされている。それでも高齢者や糖尿病、高血圧といった基礎疾患を持つ人は重症化し、命の危険もある。有効なワクチンや治療法が見つかっておらず、最大限の警戒が求められる。

 年末から今月にかけ、多くの中国人旅行客が訪日した。中国から戻った日本人もいる。港や空港の検疫を柱とした「水際作戦」を緩めるわけにはいかないが、今後は発症した人の重症化を防ぐ医療体制の構築が喫緊の課題であると考えたい。

 さらに、国内どこでも感染者が確認される可能性はある。国はウイルス検査の体制整備を加速させる必要がある。

 各自治体は、感染者を受け入れて治療ができる医療機関やベッドの数をそろえ、大規模な感染にも対応できるように関係機関の調整を進めてほしい。

 最大限の注意を呼び掛けたいのは、治療に当たる医療機関での「院内感染」の防止である。中国の現状などを踏まえれば、高齢者施設の防疫も徹底する必要がある。施設運営者側も行政の指示を待つだけでなく、早め早めの対応が欠かせない。

 市民ができる自衛は手洗いの徹底やマスク着用などに限られる。軽い風邪のような症状で拠点病院に詰めかけると、重症者の治療に影響が生じる可能性もある。まず身近なかかりつけ医や保健所に相談してほしい。

 インターネットでは不安をあおる誤情報や、中国に対する差別的表現が横行している。正しい知識を持つことを心掛け、冷静に行動することが肝要だ。

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