「医ケア」家族の負担をどう減らす 共生教育へ支援体制構築は道半ば

西日本新聞 佐賀版夕刊 梅本 邦明

医ケア児と生きる(6)

 佐賀市の金立特別支援学校会議室に昨年12月、医療、福祉、行政、教育の関係者21人が集まった。この連載の1回目に登場した同校小学部6年、山本歩夢(あゆむ)君(12)=同市久保泉町=の支援体制を話し合う会議。半年に1度開いている。

 筋力が徐々に弱る「脊髄性筋萎縮症」を患う山本君は、たんの吸引などの医療的ケア(医ケア)が必要だ。出席者は「仕組み・制度」「くらし・福祉」「医療系」の3グループに分かれ、支援内容や家族への影響、今後予想される課題、解決案を発表。「支援者の高齢化が予想される」「きょうだいが成長したら医ケアを協力できるようにしたい」などの意見が出た。

 会議を進行した相談支援専門員の林田五月さん(35)は「各専門分野で議論を深めて出席者で共有し、互いに気付きが得られたらいい」と意図を説明した。

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 佐賀県内で推計約120人いるとされる医ケア児。垣根を越えた支援体制の構築は道半ばだ。過酷な医ケアに追われ、家庭崩壊や育児放棄に至るケースもある。ある訪問看護師は「母親に負担が偏ることで不満が募り、離婚する夫婦もいる」と明かす。

 一方で明るい兆しもある。同県武雄市立西川登小の特別支援学級に通う永石日香莉(ひかり)さん(11)=同市西川登町。軟骨形成に異常などがある病気を患い、人工呼吸器を装着。車椅子で生活しており、タブレットへの入力で意思表示する。

 母美恵子さん(47)は2014年、1人暮らしをする成人の人工呼吸器患者と知り合ったことをきっかけに熟慮。「一般社会で生きていける力を娘にも養わせたい」と考えた。看護師が配置されている特別支援学校でなく、西川登小に通わせることにした。

 入学当初は保護者の付き添いが条件だったが、市教育委員会に支援を要望。市教委が看護師資格のある学校生活支援員1人を週2日派遣することで、付き添いの不要な日ができた。

 美恵子さんは昨夏、空いた日を利用し、1日5時間のアルバイトを始めた。「働いて社会に出られるのがとても新鮮で幸せ」と市の支援に感謝する。

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 ただ永石さん親子のような事例はまれで、自宅に引きこもりがちの家族もいる。

 佐賀市東与賀町の塚原絵美里さん(34)は、長女(9)の医ケアやきょうだいの育児、家事に追われ仕事に就く余裕がない。長女を乗せる福祉車両を購入できず、外出もままならない。「みんなと同じように普通に娘を学校に行かせ、働きたいだけなんです」。その言葉は記者の胸にも刺さった。

 佐賀大医学部看護学科の鈴木智恵子教授(小児看護学)は「共生教育の機運が高まり、医ケア児が一般の保育施設や学校に通う時が近い将来、必ず来る」と語る。そんな時、県内の支援体制はどれほど整っているのだろうか。 =おわり

 (梅本邦明が担当しました)

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