ビギナーの27歳記者が初挑戦、声援励みに完走 北九州マラソン2020

西日本新聞 北九州版 岩佐 遼介

 「北九州マラソン」には毎年1万人以上のランナーが参加する。中学生以来、長い距離を走った記憶がない記者は42・195キロを走る人が、なぜこんなにも多いのか疑問に思っていた。ランナーたちの熱気を肌で感じ、その理由を探りたいと思い、27歳の記者は初出場を決心した。若さと気合いで押し通そう。フルマラソンへの人生初の挑戦に心を高ぶらせながら、意気揚々と駆けだした。

 大会に向け、この2カ月半で計174キロを走り込んできた。九州国際大(八幡東区)陸上部コーチの中本慎一さんに教えを請うたことは、昨年12月28日の北九州版で紹介した。

 目標タイムは紙面には先輩が前回大会で記録した4時間43分を上回ることだと書いたが、これまでの準備に自信を深めていたので、周囲には「絶対に4時間半を切る」と宣言していた。

 冷たい雨が落ちてくる中、号砲が鳴らされると、1万2千人以上のランナーが拍手しながら走りだした。最後方に陣取った記者がスタートラインを通過するまでに10分以上かかり、参加者の多さを実感した。

 興奮状態で駆けだし、小倉北区の小倉城、到津の森公園、旧官営八幡製鉄所の東田第一高炉跡(八幡東区)と、観光名所を次々と通過する。雨と風が強くなってきたが、沿道の声援に鼓舞されて、小倉駅近くの中間点を2時間10分ほどで通過。「順調なペースだ」とうれしくなった。思い返せば、既に水たまりを避ける余裕はなくなっていた。

 異変が起きたのは国道199号を門司区の門司港に向けて走っていた時。27キロ付近で足が全く上がらなくなった。止まって太ももの前面のストレッチをすると、太ももの裏側がつった。逆に裏側を伸ばそうとすると、前側がつった。

 絶望的な気持ちを紛らわそうと、エイドステーションで「若松トマト」を食べると、ジューシーな味わいが口に広がった。周囲では徐々に歩いたり、しゃがみ込んだりするランナーが増えてきた。

 強い海風に体が押し戻されるようだ。30キロ地点の門司港にたどり着くと、「もう限界だ」と思い始めた。動かない体にむちを打つ。

 「棄権したら楽になれる」と、何度も思った。足の痛みで心が折れそうになる。ふと「棄権を考えても状況は好転しない」とも思った。頭の中で“悪魔”と“天使”が、代わる代わるささやいた。

 門司区大里の37キロ地点。目標達成はとても無理だ。大風呂敷を広げたことを後悔した。ただ寒さに耐えて沿道で声援を送り、エイドステーションではスポーツ飲料を笑顔で渡してくれる人たちの姿を見ていると、「あとちょっとだ。力を出し切ろう」と決意した。

 すり足にも近い滑稽なフォームで、歩いたり走ったり。後ろのランナーにどんどん抜かれる。それでも必死に腕を振った。

 大声援に背中を押されてゴールを駆け抜けた。タイムは4時間52分36秒。紙面に書いた目標タイムから10分近くも遅れた。

 「やっと終わった」。ゴールした瞬間は、足の痛みや強い雨風にもう耐えなくていいと、安堵(あんど)しただけだった。ただ完走メダルを掛けてもらうと、達成感と爽快感がふつふつと沸いてきた。マラソンとは、こんなにも自分と向き合うスポーツなのかと思い、魅力の一端を実感した。そして、今回掲げた目標にはいつか再チャレンジすることを心に誓った。 (岩佐遼介)

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