北朝鮮、進む市場経済化 脱北者5割が商売などで生計

西日本新聞 国際面 池田 郷

 【ソウル池田郷】2016~19年6月に韓国へ渡った脱北者の約半数が、北朝鮮国内で市場での商売など「私経済活動」に従事していたことが韓国の北朝鮮研究者らによる聞き取り調査で分かった。国営の工場や企業などで働く「国営経済従事者」は約4分の1にとどまった。社会主義に基づく計画経済が停滞して市場経済化が加速する北朝鮮社会の実態が浮き彫りになった。

 韓国メディアによると、調査は北朝鮮研究の専門家らでつくる北韓研究学会が韓国政府の要請で実施。19年だけでも約600人に聞き取りを行った。その結果、私経済活動の従事者は48%で、国営経済従事者は24%だった。私経済の従事者には国営経済との兼業も含まれている。

 朝鮮半島が分断された1948年以降、韓国への脱北者は約3万5千人に上る。同学会はこれまでに、うち約6千人を調査。私経済活動従事者は既に06~10年の調査で34%に上り、国営経済従事者(28%)を上回っていたが、今回さらに差が広がった。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は市場経済を事実上容認しているとされる。正恩氏が12年に最高指導者に就任後、「ジャンマダン」と呼ばれる市場が増え、現在は400カ所を超えるという。

 今回の調査でも、市場での商取引などを経験した脱北者の6割近くが「10年前より市場の規模が大きくなった」と答えた。識者によると、国営の工場や企業も原材料を市場から調達するなど、市場経済の活用が進んでいるという。

 北朝鮮当局が市場経済への依存度を高める背景に、核・ミサイル開発を巡る経済制裁の影響が指摘される。国連安全保障理事会は17年、石炭など前年の9割近い輸出を禁じる制裁を実施。当局は深刻な外貨不足に陥り、新興富裕層が市場で得た利益を没収するなどしてしのいでいるという。韓国銀行は、制裁の影響で北朝鮮の18年の国内総生産(GDP)を前年比4・1%減と推定している。

 調査は住民の生活状況も質問。携帯電話の利用率は41%で、11~15年(27%)から増加。食料事情では「1日3回食事をしていた」との回答が9割を超え、約3割だった00年以前から改善した。ただ、依然として主食はトウモロコシが5割近くに上り、コメは約4割だった。

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