新鑑定に揺らぐ被害者の死因 第4次再審請求へ 検証・大崎事件(1)

西日本新聞 一面

 殺人などの罪で懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(92)が一貫して無実を訴え、再審を求めてきた大崎事件は発生から40年が過ぎた。3度目の請求で地裁、高裁が再審開始を認め、開くかに見えた「再審の扉」は昨年6月、最高裁で閉ざされるという異例の経過をたどっている。3月末に予定される第4次請求を前に、現場を訪ねた。

 事件は1979年10月12日に起きた。鹿児島県大崎町で、被害者の四郎さん=当時(42)=が酒に酔い自転車ごと側溝に転落。路上に倒れている姿で発見される。被害者宅の近くに住む男性2人が迎えに行き、1・1キロ離れた自宅へ軽トラックで連れ帰った。

 横たわる被害者を最初に見つけた西崎良一さん(61)に話を聞くことができた。当時21歳。「車で徐行しながら見て父親の知人だと気付き、すぐに父親に知らせた。けがや出血はない様子でした」と振り返る。

 自宅まで運んだ2人は、当時47歳のIさんと37歳のTさん。被害者は側溝に落ちたためか、びっしょりぬれていた。40年前に軽トラが通った道を、車で走った。農地が広がる風景は、東九州自動車道の建設工事が進んだ以外は当時とあまり変わっていないという。

 わずか1キロ余り。被害者宅があった所まで数分。被害者の長兄でアヤ子さんの夫だった一郎さん=当時(52)、次兄の二郎さん=同(50)=の自宅も同じ敷地内にあった。転落事故の3日後、被害者宅の牛小屋から遺体が発見される。その後、アヤ子さん、一郎さん、二郎さん、その息子の太郎さん=同(25)=が相次いで逮捕された。

 車を止めて100メートルほど歩くと、竹と雑木に囲まれた空間に出た。一角に朽ちた小屋。「アヤ子さん宅の物置でした」。彼女の支援者、武田佐俊さん(76)が教えてくれた。左手に被害者方と牛小屋があったというが、やぶに覆われて前に進めない。住人がいなくなった一帯は、人を寄せ付けない雰囲気だった。

 被害者は倒れていた地点から車で自宅へ運ばれた-。ここまでは事件当日の出来事として、アヤ子さんら4人を有罪とした確定判決と、冤罪(えんざい)の可能性を認め再審開始決定を出した福岡高裁宮崎支部決定(2018年)は一致する。

 その後の犯行ストーリーは異なる。確定判決は、自宅土間に放置された被害者がアヤ子さんら3人にタオルで絞殺され、太郎さんを加えた4人によって堆肥に埋められた、と認定した。

 一方、高裁は新証拠を基に「アナザーストーリー」に踏み込む。被害者は自転車事故による出血性ショックで死亡した可能性があり「殺人なき死体遺棄事件」だったのではないか、と。

 筋書きを分けた「自宅到着後」。一体、何があったのか。

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