「原因は緊張しているから」は誤解 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

連載:吃音~きつおん~リアル(14)

 3歳頃から吃音(きつおん)が始まった男の子(5)。母親は幼稚園から「1人で話す時に緊張するようで、よく言葉を繰り返していました」「今日は緊張していなかったみたいで、あまりつっかからなかった」といった報告を受けていました。

 インターネットにも「吃音は緊張、ストレスから生じることもある」と書いてあり、母親は思い当たることがあったそうです。ほとんど叱らない父親に比べ、母親は食事や着替え、片付けなどいろいろな場面でよく注意していました。しかも、母親に話し掛ける時だけ「あ、あ、あ、あのね」「お――――かあさん」となることが多かったのです。

 「私が怖いから緊張しているのかな。息子に申し訳ない」。母親は優しく接するよう心掛けていますが、幼稚園の報告と家庭での様子はやはり異なり、母親の前では症状が目立ちました。「これ以上、どうしたらいいの」と、だんだん自信を失っていきました。

 「吃音の原因は緊張」と誤解している人が多いのですが、あくまでも話し始めのタイミング障害です。例えば合唱など、複数で声を合わせる際は症状が出ないという特徴があります。1人だと話し始めるタイミングが合わないけれど、他の人に合わせるとすらすらと言葉が出るのです。

 幼稚園の先生が園での様子だけを見て原因を誤解して接したことで、母親は困惑してしまいました。ですが、むしろ家庭ではリラックスして、自分が話したいことを思いついたタイミングで話そうとするから、吃音もたくさん出るのです。こう説明すると、悩んでいた母親は納得し、安心してくれました。

 このケースは、保護者が最初に相談する幼稚園や保育所、小学校の先生たちに知っておいてほしい事例です。保護者が自らの子育てに自信を持てるよう、支えてもらえればと思います。 (九州大病院医師)

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