【動画あり】戦前の水族館しのぶ「あしか唄」 福岡・箱崎で歌い継ぐ

西日本新聞 社会面 今井 知可子

 明治から昭和初期にかけて、福岡市東区箱崎にあった水族館をしのぶ「箱崎あしか唄」が、ゆかりのある地元喫茶店で愛唱されている。水族館で人気を集めたのは、現在は絶滅したニホンアシカ。その剥製が2018年、移転直前の九州大箱崎キャンパスで見つかったことをきっかけに生まれた歌だ。水族館、アシカ、大学…箱崎にかつてあった風景を、さまざまなジャンルの演奏家たちが歌い継いでいる。

 「箱崎水族館」は1910(明治43)年、博多湾を望む箱崎浜にオープン。開館翌日の福岡日日新聞(西日本新聞の前身)によると、大水槽でアシカ2頭が飼われ、1頭は「朝鮮産で体量80斤(約48キロ)ぐらい、よく人に馴(な)れ鰯(いわし)を持って吼(ほ)えと言えば吼え、回れと輪をかき示すと槽の水中を泳いで回る」とある。もう1頭は当時の樺太で捕獲されたばかりで気が荒く、人を見るとほえていたという。どちらも70年代に絶滅したニホンアシカとみられる。水族館は戦前の35(昭和10)年に閉館した。

 曽祖父が水族館に勤めていた花田典子さん(63)は、このアシカが剥製になって九大にあるらしいと家族から聞いていた。「なんとか探し当てたい」との一心で2009年、大学近くに喫茶店「箱崎水族館喫茶室」を開業。すでに九大が箱崎から伊都に移転することが決まっており、急いで探さねばならないと店に立ち寄る研究者たちに情報を求めた。

 移転作業中の18年、取り壊し直前の農学部水産増殖学研究室の収蔵庫でアシカの剥製が見つかった。伝え聞いた花田さんはドキドキしながら剥製の清掃作業を名乗り出た。真っ白なほこりを払うと意外に肉感的な表皮が出てきた。「よかった、いてくれた」。アシカは現在、九大総合研究博物館(旧工学部本館)に保管されている。

 このいきさつを多くの人に知ってもらおうと、花田さんは店で折々演奏会をするピアニストの河合拓始さん(56)=福岡県糸島市=に曲作りを依頼。河合さんは「イワシをもらって得意げに泳ぐアシカの様子を思い浮かべて」童謡調の曲にした。作詞は1番を河合さん、2番を花田さんが担当した。

 同喫茶室は元々、地元から「ライブハウス」的に使われており、あしか唄は「九大フィルハーモニー・オーケストラ」やギター奏者、シャンソングループなどに一気に広まった。

 花田さんはアシカが残る博物館が、箱崎の地で存続することを願い、歌詞の最後にこう織り込んだ。「♪箱崎の自慢の博物館 アシカさんも笑ってる」 (今井知可子)

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