【DC街角ストーリー】民主党の混戦、吉か凶か

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 「もしもし、ノブユキさんですか? ○○陣営です」。今月、米大統領選の野党民主党の候補選びが始まって以降、私のスマートフォンにはこんな電話やメッセージの着信が格段に増えた。候補者集会への参加や活動支援、献金を募る連絡だ。

 各陣営の活動を追うため電話番号を伝えているので連絡が来るのだが、私が日本人記者で選挙権がないと告げても「(集会の)場所は分かる?」としつこく食い下がる。とにかく来場者を増やして盛り上げたいのだろう。候補の乱立で、混戦を通り越して混迷ともいえる党内情勢の故だ。劣勢候補の陣営からは「△△候補をあきらめないで」と懇願調のメッセージも来る。

 そうした選挙活動の多くはボランティアが支える。意中の候補を支援するため、広大な米国を熱心に飛び回る人の多さに驚かされる。民主党の候補指名争い初戦の舞台となった中西部アイオワ州では、左派系候補の応援にわざわざ西海岸から来たという人に何人も出会った。

 ある有権者の自宅で取材中、東海岸から来たある候補の支持者が戸別訪問に来た。外は雪が降りしきる中、彼は玄関先に立ったまま候補の政策についてとうとうと熱弁を振るった。

    ☆    ☆

 民主党のボランティアからは「本当は戸別訪問なんてしたくない」との声も聞く。それでも彼らが行動する共通の理由は「トランプ大統領の再選を絶対に阻止したい」との思いだ。

 民主党は候補によって政策が大きく異なり、支持者の考えも幅広い。多様化していると言えば聞こえはいいが、正直バラバラだ。それでも「反トランプ」で結束できれば、トランプ氏にとってこれほどの脅威はない。

 ただすでに冷めた目で見る人もいる。初戦のアイオワ州ではトランプ氏への反発から投票者が増えると予想されたが、外れた。ある陣営関係者は「党内の路線争いにうんざりしている支持者が非常に多い」と嘆いた。

 有権者のほとんどが「トランプ氏は選挙に強い」と口をそろえる。史上まれな激戦と予想される今年の大統領選だが、トランプ氏の「強さ」への脅威と民主党への失望が重なって、大統領選そのものへの関心が早晩しぼむのではないかとも感じる。

 とはいえ、アイオワ州のある集会には車で8時間以上離れたオハイオ州の高校生たちが校長の引率ではるばる参加していた。今年、選挙権を得る生徒たちが自ら「左派、中道候補の集会をはしごして演説を聴き、政策を比較する」と希望したという。熱気は間違いなく存在する。

 民主党の混戦の長期化は支持者の分裂を深め、トランプ氏に「吉」との予想が多いが、逆に民主党候補への関心を高めるとの見方もある。民主党支持者は結局まとまると個人的には思うのだが、確信は持てない。 (ワシントン田中伸幸)

 =随時掲載

PR

国際 アクセスランキング

PR

注目のテーマ