聞き書き「一歩も退かんど」(86)42年経て「再審の扉」 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 2009年12月、また新たな「無罪への扉」が開きました。布川(ふかわ)事件の桜井昌司(しょうじ)さんと杉山卓男(たかお)さんについて、最高裁が再審開始を認めた東京高裁決定を支持し、検察の特別抗告を棄却したのです。これにより、再審、いわゆるやり直しの裁判が開かれることが確定しました。

 2人は霞が関の司法記者クラブで喜びの会見をします。逮捕から42年の歳月が流れていました。杉山さんは「有罪が確定した時は人生が終わったと思った」と感無量です。桜井さんは「多くの力添えのおかげ。いつかは分かってもらえるとの信念が支えになった」と爽やかに笑いました。

 桜井さんとは志布志での可視化集会で親しくなっていたのですが、29年もおりの中にいたのに、暗さがみじんもありません。おおらかで気配り上手で、いっぺんに好きになりました。再審開始はわが事のようにうれしかったです。

 ここで布川事件の説明をしておきますね。発生は1967年8月。茨城県利根町布川で62歳の大工の男性が殺され、当時20歳だった桜井さんと21歳だった杉山さんが強盗殺人罪で起訴されます。公判で2人は無実を訴えますが、最高裁で無期懲役刑が確定。96年に仮釈放後、再審請求して闘ってきました。

 桜井さんによると、友人のズボンを1本盗んだという、ささいな窃盗容疑で別件逮捕され、深夜までの取り調べが続きました。うその自白をしたのにはいろんな理由があったそうです。

 まず、刑事が「裏付け捜査でアリバイが否定された」とうそをつきます。それでも無実を証明しようと頑張りますが、密室で刑事からがんがんやられます。ついにはうそ発見器にかけられ、「おまえが犯人という検査結果が出た」と言われ、心が折れたそうです。

 再審請求では、捜査員が確定審で「ない」と偽証していた2本目の取り調べの録音テープが証拠開示されたのが、決定打になりました。テープには細かい中断や編集の跡があり、捜査側が自白の任意性を主張できる部分だけ提出していたことが判明します。警察が自分たちに都合の悪い部分の証拠は隠す-。ん、どこかでもありましたね。志布志事件と同じです。

 年が明けて、桜井さんから電話が。「一度、志布志事件の現場を案内してください」。もちろん大歓迎です。2010年4月29日、桜井さんが私のホテルにやってきました。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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