新型肺炎感染者の足取り公表に差 自治体手探り、風評被害にも配慮

西日本新聞 社会面 一瀬 圭司

 新型コロナウイルス感染者についての情報提供を巡り、都道府県によって公表内容に差が出ている。プライバシーや風評被害に配慮して具体的な行動歴を公表しない自治体が多い一方、「一般市民の不安を解消してパニックに陥らないようにするため」に感染者の足取りを独自に公表するケースもある。国内で感染が拡大する中、九州でも公表基準が固まっていない県が目立つ。

 「公衆衛生上の観点と個人情報保護のバランスに配慮し、適切に発信していく」。加藤勝信厚生労働相は18日の記者会見で、情報提供についてこう述べた。

 感染症法は、感染者情報について予防に向けた積極公開とともに個人情報への配慮を定めている。厚労省は個人情報保護や風評被害を懸念し、職業や行動歴は公開しておらず、公表内容は自治体の裁量に委ねているのが実情だ。

 大阪府は1月末、府内で発生が確認されれば、滞在した市町村まで公表する独自基準をつくった。仮に感染者が百貨店や大型ショッピングモールなどで不特定多数と濃厚接触をした可能性がある場合は施設側と調整した上で店名も発表するという。担当者は「市民が疑心暗鬼にならないよう出せる情報は出す」と話す。

 一方、情報内容の充実を求める市民からの批判を受け、公表基準を拡大したのは北海道。当初は公表情報を性別や年代に限っていたが、居住地や国籍や職業、行動歴などをある程度公表するよう見直した。屋形船などで感染拡大が疑われるケースが続いた東京都も「市民の不安を少しでも解消するため」として、当初の公表基準を緩和して対応している。

 九州各県でも感染者が出る事態に備え公表基準の検討が進む。各県は「基本的に国に準じる方向」(福岡)▽「行動歴は国の基準よりも踏み込む可能性がある」(佐賀)▽「離島も考慮して不安を取り除けるよう努力したい」(長崎)▽「基準を整理したい」(熊本)-などとしており、対応にばらつきが出そうだ。

 全国知事会は国に公表基準を示すよう要望しているが、厚労省は「地域や感染者の状況が多彩なため一律の基準はそぐわない」(幹部)。広瀬弘忠東京女子大名誉教授(災害リスク学)は「個人のプライバシーに十分に配慮した上で正確な情報が提供できれば、市民の側も注意すべき点が分かり、安心安全につながる」と話す。 (一瀬圭司)

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