事件当日「空白の30分」 泥酔か事故か 検証・大崎事件(3)

西日本新聞 社会面

 殺人事件ではなく、自転車ごと側溝に転落したことによる事故死だったのではないか-。仮にそうなら、大崎事件は冤罪(えんざい)ということになる。裁判記録を基に、事件当日の被害者の「足取り」を追ってみた。

 1979年10月12日。被害者は朝から酒を飲み、午後から外出。午後6時ごろ、自宅から1キロ余り離れた路上に倒れているのが見つかり、近所のIさんとTさんが午後9時ごろ自宅に連れ帰ったとされる。外出後、雑貨店を訪ねたり、自転車を押したりする姿が目撃されている。

 午後3時半ごろには、自宅前で酒気を帯びて車を運転し、警察官から注意されたことも確認できた。

 不可解なことがあった。午後5時半ごろ、雑貨店で店主と会話をしていた被害者が、わずか30分後、店から約300メートルしか離れていない路上で倒れ、寝ていたという点だ。

 確定判決によると、被害者はその後「酔いつぶれて前後不覚のまま」自宅に運ばれ、殺害時刻とされる午後11時ごろの段階でも「自宅の土間に座り込み泥酔のため前後不覚だった」と認定されている。泥酔状態が午後6時から11時まで、実に5時間も続いた計算になる。いつ、どこでそんなに飲酒したのか。

 「泥酔」の一番の根拠は被害者を連れ帰ったIさんらの供述だった。路上に倒れていたときの様子を「物事を言える状態ではなく、1人で立つこともできない泥酔状態でした」と説明していた。

 当時の目撃者の裁判記録も調べた。目撃情報のない「空白の30分」を挟む前後の様子はこうだ。

 午後5時半ごろ、被害者が雑貨店に立ち寄る。焼酎の2合瓶2本、タマネギ1袋を「ツケで売ってほしい」と頼み、断られるが「そげん言わんで」と言って持ち帰った。「話しぶりからは、そう酔っている様子はなかった」(雑貨店主の記録)

 午後6時ごろ、同店から約300メートルの場所で、車で通行中の当時21歳の男性に発見される。「被害者が自転車もろとも倒れ、寝ていたらしい」。これは男性本人の記録ではなく、男性から話を聞いた父親の話として記録に残る。息子の説明に「泥酔」はない。

 どうだろうか。「そう酔っている様子はなかった」被害者が、わずか30分後、路上に倒れていた。雑貨店で買った焼酎のせいか。転落現場に転がっていた2合瓶2本のうち「1本は封を切っておらず、1本は半分ほど残っていた」とIさんは警察に供述している。

 被害者が道路に横たわっていたのは、泥酔ではなく転落事故の影響だったのではないのか。既に紹介したように、2人の法医学者も「事故死の可能性」を指摘している。当時を知る目撃者2人を訪ねた。

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