「聖王」と呼ばれるフランス王がいる…

西日本新聞 オピニオン面

 「聖王」と呼ばれるフランス王がいる。13世紀に44年間在位したルイ9世。高潔で信心深い人柄とされる。官吏の腐敗防止や貨幣の統一、裁判制度の整備など内政に力を注ぎ、国を富ませた。領土的な野心はなく、他国の争いの調停役を買って出ることも

▼貧しい人や病人のための施設を造り、自ら食べ物を与えたりもしたという。その姿を描いた一枚が、九州国立博物館で開催中の「フランス絵画の精華」展に。ル・シュウール作「病人たちをいやす聖ルイ」だ

▼その頃の国王は戴冠の際に神の祝福を受け、病気を治すなど特別な力を与えられると信じられた。即位した王の最初の仕事は、当時不治の病と恐れられた疫病の患者に触れることだった、と伝わる。作品のルイ9世は、王のマントをまとったままひざまずき、椅子に腰掛けた患者の足を洗っている

▼進んだ医学も効果的な薬もない時代である。疫病が大流行すれば国が滅びかねない。恐ろしい病を鎮める力があると民に信じられることが、為政者には不可欠な資質だったのだろう。それは現代にも通じる

▼新型コロナウイルスによる肺炎が猛威を振るっている。国内でも感染が広がり、死者も出た。対策は後手に回っている印象も否めない

▼どう鎮めるか、為政者の資質が問われる大事な局面だ。神の恩恵を当てにせずとも、医療や保健衛生の知恵はある。「民の足を洗う」覚悟で臨んでもらいたい。

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