景気の行方 政府は危険水域の認識を

西日本新聞 オピニオン面

 景気の雲行きが怪しくなってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済にも深刻な影響が出始めている。景気は既に危険水域にあると言っていい。政府はこれまで以上に国内外の動きに目を凝らし、機動的な経済財政運営に努めるべきだ。

 安倍晋三首相は経済最優先を掲げ、政府は「景気は緩やかに回復している」との判断を維持してきた。戦後最長とされる景気拡大は、その経済政策アベノミクスの成果と主張してきた。だが現状で、この「回復」判断にこだわれば、政策転換の遅れにつながりかねない。

 不安材料の一つは、昨年10月の消費税増税をきっかけに内需の柱である個人消費が大きく落ち込んでいることだ。民間設備投資も減少し、昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は速報値で年率6・3%減の大幅マイナスだった。

 この落ち込みは、2014年4月に消費税率が8%に引き上げられた直後の年率7・4%減に匹敵する。キャッシュレス決済へのポイント還元など手厚い対策を政府が講じ、増税前の駆け込み需要が前回ほど大きくなかった点を考慮すれば、実態はより深刻とみるべきだろう。

 政府は昨年末に事業規模26兆円の総合経済対策をまとめ、これを裏付ける19年度補正予算が成立した。台風など災害被災地の復旧・復興を急ぎ、米中貿易戦争に伴う世界経済減速に備える狙いで、景気はすぐ回復軌道に戻るというのが政府のシナリオだった。その目算は狂い、今年1~3月期もマイナス成長に陥るとの恐れが指摘される。

 最大のリスクは中国で発生した新型ウイルスの感染拡大だ。中国政府による海外への団体旅行禁止で訪日観光客は激減し、クルーズ船の寄港中止で九州の観光地から外国人の団体客もめっきり減った。こうした事態が続けば、宿泊施設や土産物店、百貨店、バス会社などは深刻な打撃を受ける。政府は資金繰りの支援を打ち出したが、状況によっては対策を強化すべきだ。

 影響は製造業などにも広がる。中国は日本の最大の貿易相手だ。企業もサプライチェーン(部品の調達・供給網)で密接につながっている。中国からの部品供給が滞り、九州の自動車工場が操業停止に追い込まれた。日本企業の中国での生産や国際物流にも支障が出ている。

 事態の収拾はまだ見通せない。折からの春闘で経営側がこれを、雇用や賃上げの抑制材料に使うのは厳に慎むべきだ。

 当面は大型催事の中止など国内でも感染拡大防止策は必要だろう。過度な活動自粛には注意したいが、感染の早期終息は経済対策としても価値がある。

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