「最強部隊」機動隊を1日体験 想像絶するストイックさに涙

西日本新聞 西村 百合恵

 福岡県警の「最強部隊」とされる「第一機動隊」(福岡市東区)で12日、新聞社やテレビ局の記者を対象にした初めての体験入隊があった。若手記者10人が参加し、女性は入社1年目の私(28)だけ。前職で消防や自衛隊に加え、ラグビーなどのスポーツ取材の経験があり、つらいトレーニングは何度も目にしてきた。機動隊のすごさはいかほどかと意気込んだのだが、まさかの展開に…。

 午前9時、入隊

 濃紺の地味な長袖、長ズボンが隊の制服「出動服」だ。女性隊員がいないため、男性用の小さいサイズを借りたが、ダボダボ感は否めない。編み上げ靴は、転倒防止のため「ひもは外に出さないように折り込んで」と注意され、ベルトの位置から裾のしまい方など細部までチェックが入る。

 実田公彦隊長から「今日は私たちと同じ機動隊員です。気を引き締めて臨むように」と訓示を受けた。自然と背筋が伸びる。

 午前10時半、逮捕術

 逮捕術を学ぶため、道着に着替えて道場へ。逮捕術は素手や警棒を使って容疑者を制圧する武術。警察学校で男女問わず習得する。

 道着の上から剣道で使用するような防具を着け、布を巻き付けた竹刀(長さ66センチ、約300グラム)を相手の肩や胴に振り下ろして動きを封じる。「軽い」と思ったが、1分ほど振り続けると腕がしびれてきた。

 男性隊員を相手に2分間の模擬試合を3セット。「バシ、バシ」-。手加減されているのに、肩や胴を何度も打ち込まれた。

 「痛いって」。ムキになって竹刀を振り回しても、隊員の体に当たらず、はね返される。「おいどうした、来い!」と“挑発”されても、息が上がって動けず、竹刀を奪われ「制圧」された。

 正午、昼休憩

 鉛のように重い体を引きずって食堂に向かった。金曜日の定番で隊員に大人気のカレーだ(水曜日だけど)。ボリュームあるカツにニンジン、ジャガイモなど野菜がゴロゴロ。サラダやフルーツも添えられて栄養満点。「おいしいっ」

 午後1時、救助

 次に挑んだのは有毒ガス爆発事故を想定した救助訓練だ。空気ボンベを背負い、マスクとゴーグルを装着して要救助者を担架で搬送する。記者4人で持つも、足元がふらつく。階段の昇降は指がちぎれるかと思うほど痛い。

 「(ボンベの)空気はすぐなくなるぞ」と注意されても呼吸を意識する余裕なんてない。「落とすな頑張れ!」の声は聞こえるが、どんどん息苦しくなる。視界もぐっと狭くなり怖くなった。フラフラの状態でなんとか搬送を終えた。

 午後3時半、盾操法

 小雨が降る中、グラウンドへ。学生運動などの映像で見慣れた黒の防護服とヘルメット、盾の姿に“変身”。装備は計約6キロあり、体中に力を入れないとよろめきそうになる。足や腕全体を覆うプロテクターも身に着け、手足は動かしづらい。左手には重さ8キロのジュラルミン製盾を持つ。

 盾を素早く頭上に持ち上げる訓練では、ものの数十秒で腕がプルプルしてくる。腕を下げようとすると、すかさず「どうした落ちてるぞ!」と突っ込まれる。思わず心の中で叫んだ。「この鬼ぃ!」

 腕の感覚がほぼない状態で、仕上げは片手で盾を持ったままのランニング。握力も奪われ、両手で持っても安定感を失って蛇行してしまう。半周(約100メートル)走ったところで盾を手放した。それでも装備が岩のように重く、腕も振れない。1キロ走を完走できずにリタイア。情けない。気づいたら涙があふれていた。

 「盾があると全く怖くない。それくらい大切な物だ」と教えてくれたのは浦賢児副隊長。盾は凶器や投石から身を守るだけでなく、角を使うと武器にもなる。危険な現場で、幾人もの隊員の身も心も守ってきたのだ。それを手放した私は本当の現場だったら、自分の身さえも守れない可能性があるということ。盾の重みだけでなく、使命の重さもずしりと心に響いた。

 午後5時半 除隊

 「体験入隊のきつさは普段の訓練の2割程度。県民を守るためにこれからも共に頑張りましょう」。実田隊長から修了証書を手渡され、こう激励された。立っているのもやっとなのに「これで2割…」。普段の訓練の厳しさを実感した。

 危機にひるむことなく、容疑者確保や救うべき命のために前進する-。ストイック過ぎる訓練を日々こなすことで、「最強部隊」としての体力も精神力も鍛えられるのだろう。隊員の8割が20代。私と同年代が担う重責と努力に、頭が下がる思いとともに、とてもいい刺激をもらった。

 翌日、起き上がれないほどの全身の筋肉痛と体中にできた青あざを見て、また涙がこみ上げてきた。当たり前だけど、隊員は今日も訓練している。私も取材のスキルを磨き、年明けから始めたランニングも強化する。いつかリベンジしたい。(西村百合恵)

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