海外留学の前に安全管理の責務の確認を NZカンタベリー地震9年

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え❽

 新型肺炎が人の移動に伴い容易に越境しています。リスクのよく分からない移動先の国で災いに巻き込まれても、自分の力で生き抜かねばならない時代だと、改めて気づかされます。

 2011年2月22日、ニュージーランドで起きたカンタベリー地震で語学学校の入居するビルが倒壊し、学んでいた28人の日本人が巻き込まれて死亡した悲劇を覚えておられますか。

 治安も良く自然の豊かなニュージーランドは日本人が英語を学ぶ留学先として人気があり、富山外国語専門学校の生徒らが犠牲になりました。一命を取り留めた当時19歳の男子学生は救出の際に挟まれた右足を切断せざるを得ませんでした。大変なショックであったろうに、メディアの取材に応じ、救助と治療への感謝を伝えようと気丈に受け答えする姿に感銘を受けたのを今でも覚えています。

 国内では直後に東日本大震災が発生したことで、カンタベリー地震への関心が薄らいでしまった感は否めません。しかし、若い前途あるお子さんを亡くされたご遺族にとって、悲しみは関連報道の大小、多寡とは関係なく続きます。さらに倒壊したビルに設計上の欠陥が見つかったのに、刑事訴追は断念されました。ご遺族はこれまで謝罪も賠償も受けていませんでした。

 震災後にニュージーランドの第三者委員会の調べで、ビルの柱の弾力や強度の不足といった設計上の欠陥に加え、施工に問題があったことも分かり、行政がビルの利用を認めていた点も問題視されました。しかし、警察は設計から時間がたっていることなどを理由に立件を断念したのです。

 実は今月、9年たって初めて、現地クライストチャーチ市のリアン・ダルジール市長が、ご遺族に対して謝罪する予定です。

 若い学生を預かる大学教員の一人として私も、市長の謝罪の言葉だけでなく、この9年間にどのような安全対策を講じたのか、確認しようと思います。

 読者の皆さまも、お子さんを海外留学へ送り出される際は安全管理の責務が明記されているか、パンフレットなどをぜひ確認してください。基本的に自然災害による傷害の補償は、海外旅行保険でカバーされているのが通例なので確認した上で加入してください。

 他にも地震への注意が必要な国はあります。中国、イタリアをはじめ、地震がほとんど起きないため耐震基準が緩いイギリスを宗主国とするオーストラリア、カナダなどなど。アメリカは西海岸で地震が頻発するため、耐震基準は比較的頻繁に更新されていますが、更新前の古い建物も残っています。

 なにより耐震性能が不十分な恐れのある建物の場合は、阪神大震災や熊本地震の際の教訓を踏まえ、1階への入居や宿泊は避けるようお勧めします。(九州大助教 杉本めぐみ) 

 ◆備えのポイント 海外滞在時に建物内で地震に遭ったら、日本の避難訓練でやるように机などの下に入って揺れが収まるのを待つより、頭部を保護してすぐに建物外に避難するほうが良い場合がほとんどです。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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