謎の“国旗売り”の正体は・・・ 各地に出没の「ベッグパッカー」?

西日本新聞 黒田 加那

 「小さな日本国旗を売る外国人に会った。募金のつもりで買ったが詐欺かもしれない」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、福岡市西区の男性からこんな声が寄せられた。JR博多駅近くで同様の外国人に遭遇したという女性も。ツイッターでも、東京や沖縄などで同じ経験をしたと語る人たちが相次いでいる。どうやら日本のあちこちで、謎の”国旗売り”が活動しているようだ。

 男性の報告はこうだ。1月29日の午後2時半ごろのこと。男性が営む自動車整備工場で仕事をしていると、20代くらいで茶髪の白人男性が入ってきた。

 無言で差し出されたカードにはこう書かれていた。「私たちは聴覚障害者です。あなたたちとの文化にふれあいたいので、私たちの旗を500円で購入していただければ素晴らしい日本を知ることができる」。ちょっと怪しげな日本語に英語が併記されていた。

 募金の一種だろうと思った男性は、旗を2本受け取り、計千円を支払った。白人男性はお金をもらうと黙って出て行ったという。

 男性が家族に話したところ、「詐欺ではないか」と指摘された。インターネットで調べると、同様の事例が全国であると知った。カードの文言も同じだった。思い返せば英語の文面も不自然で、本当に聴覚に障害があるのか疑わしいそぶりもあったという。

 男性のほか、店の従業員2人も旗を買った。同じような旗は、大手通販サイトのアマゾンでは、12本で250円ほどで売られている。「障害がありながら福岡まで来てくれた外国人におもてなししたいという一心だった。詐欺であれば悔しい」と男性は語る。

 福岡西署によると、同じ日に国旗を売る外国人に関する通報が2件あったという。「白人女性が旗を持って近寄り、手渡そうとしてきた」という70代男性からの通報もあった。国旗を売る外国人には、女性もいるようだ。

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 西区以外でも国旗売りが目撃されている。福岡市の女性は1月26日の午後7時ごろ、JR博多駅付近のカフェで、若い白人男性に国旗を渡され、カードを見せられた。文言は西区の男性に渡されたものと同じ。女性の夫が断ると、無言で店を出て、今度は道行く人々に国旗を渡し、メモを見せようとしていたという。近くには、同様の行為をしている別の外国人男性の姿もあった。「(2人の行動は)慣れていると感じた」と女性は語る。

 ツイッター上では、福岡県外で同様の経験をした人たちの投稿も相次いでいる。東京では数年前から「国旗を売る外国人に深川で遭遇した」「秋葉原で日本国旗を配っている白人女性がいる」などの目撃談が続く。大阪でも「大阪市内で旗と500円を交換した」などとつぶやいている人がいた。手渡されるカードの画像を投稿している人も多いが、いずれもほとんど同じ内容だった。

 今年に入ってからは、福岡のほかに沖縄や熊本など、九州・沖縄地方での目撃情報が増えている。

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 国旗売りの報告は国内にとどまらない。

 海外では、募金などの形で旅行資金を求めながら旅をする「ベッグパッカー(beg packer)」の存在が報じられている。大きなリュックを背負って旅をする「バックパッカー」と、物乞いを意味する英語「ベッグ(beg)」を掛け合わせた造語だ。

 東南アジア地域で多いようだが、2018年には、韓国紙・中央日報が韓国で増加するベッグパッカーの実態を報じた。ソウルで20代の白人男性から「私は聴覚障害者で、旅費を準備中なので、太極旗(国旗)を3千ウォンで買ってほしい」と書かれた紙を受け取ったという、福岡の事例とそっくりな体験談もある。

 この記事では、韓国で見られるベッグパッカーの多くが欧米人であることを特徴として挙げており、「西洋人にとって無銭旅行は一種の文化」「白人がアジアを比較的甘くみて、韓国の人々も彼らに友好的である事実が知らされたことからベッグパッカーが増えている」とする識者のコメントも紹介している。

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 日本で目撃されている国旗売りたちもベッグパッカーなのか。謎は深まる。

 こうした行為は犯罪行為に当たらないのか。福岡西署の担当者は「詐欺なのかどうかも分からないし、立件は難しいだろう」としており「不審に思ったら周囲の人や警察に相談を」と呼びかけている。

 あなたの特命取材班は、この問題についてTNCテレビ西日本(福岡市)の報道情報番組「福岡NEWSファイルCUBE」と連携して取材をしてきた。22日午前10時25分からの放送で特集が予定されている。(黒田加那)

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