男の育児「幸せの近道」 上野洋光

西日本新聞 オピニオン面 上野 洋光

 職場結婚した妻が異動で上京した昨秋以降、4歳と2歳の男児2人と暮らす。保育園の迎えや夕飯、入浴は近くに住む義父母が担ってくれているが、寝かし付けから登園までの時間と休日は一緒だ。

 朝7時、洗濯物をたたみ、2人を起こす。抱っこをせがむ次男をなだめる。炊事、トイレ、着替え、片付け…。食事中に遊び始め、次男が「たたかれた」とわめき、長男は牛乳をこぼす。叱りたくはないが、大きな声も出る。

 「おとうさん、きらい。おかあさんがいい」。子どもたちの厳しい物言いにたじろぐ時間はない。「お母さんはおらん。急いで着替えろ」

 小泉進次郎環境相の育児休業取得を巡り、さまざまな議論がある。1月下旬は「取るだけ育休 嘆く妻」の記事も出た。男性の育児や家事のスキルが低く「休んでも役に立たない」と耳が痛い。

 44歳で長男を授かり、2カ月間の育休を取得し、その間は仕事から解放された。そもそも子育てに終わりはなく、うんこがトイレでできるようになり、平仮名も少し覚えたと喜んでいると、親に口答えをするようになる。「成長」はうれしいが、育休中より今の方が確実にしんどい。

 「子育て中の親はその時々に最大限の苦労をしていると感じるもの。だから子育ては親育ちの時間」。熟年の女性からの励ましだ。確かに家事力は向上し、我慢強くなった。同様に苦労したはずの両親への感謝も改めて感じた。

 配偶者を嘆く気持ちも分かるが、育休はその後も男性が子育てに関わるための「登竜門」と考えてもらえないだろうか。失敗も温かく見守り、できることを増やす手助けは育児と同じ。公平な負担を目指すため作戦を練ってほしい。

 育休から復帰後、後輩に育休を勧めるようになった。取得前、職場で何も言われなかったが、「仕事をせずに育児ですか」という罪悪感といたたまれなさがあった。私自身もその空気を醸す側だったのかも、と思う。いまだ社会を覆う雰囲気でもあるだろう。制度改革や収入補償の拡充も必要だが、小泉環境相の育休が、男性の育児を応援する社会の空気につながればいい、と期待している。

 34歳の女性が首相を務める「幸福度世界一」のフィンランドでは男性の育休取得率が8割超。女性の社会進出を支え、育児や家事を普通に担当することが新時代の「幸せへの近道」なのかもしれない。

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 うえの・ひろみつ 福岡県赤村出身。フィリピンの邦字紙「マニラ新聞」を経て2000年入社。長崎総局などを経て19年9月から筑紫支局。

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