新入社員の転職あり?それとも我慢? 変わる雇用、街頭で聞いてみた

西日本新聞 社会面 金沢 皓介 吉田 真紀 黒田 加那

 「入社したばかりの会社が合いません。数年は我慢して続けるか、早く見切りを付けて転職するか悩んでいます」。九州に住む社会人1年目の女性(23)から、そんな声が特命取材班に寄せられた。終身雇用制に代表される日本型雇用慣行が揺らぎ、働き方も多様になる今日。仕事とどう向き合えばいいのだろうか。

 女性は昨春、大手金融系企業に入社。研修を経て口座開設などの契約を取る外回りの営業を始めた。目標という名の「ノルマ」は月数十件、達成できない月が大半。頑張って取った契約でも入金額が小さければ評価されないという。

 「うちの会社は数字が全て」と先輩から叱咤(しった)激励を受ける日々。「成果主義の社風は自分の性格に合わないのでは」と今年初めから転職を意識するようになった。周囲からは「1年は働いた方がいい」「早く新しい道を見つけた方がいい」と異なるアドバイスを受け、気持ちが揺れている。

      ■

 続けるべきか、辞めるべきか-。西日本新聞のインターンシップに参加した大学生12人が19日、福岡市・天神の街頭で計97人に尋ねた結果、辞めることに「賛成」が49人、「反対」が31人、「どちらでもない」が17人。世代別にみて傾向に差は見られなかった。

 「僕も新卒1年目で辞めました」。設計関係の会社に勤める男性(48)は言う。就職先の過酷な労働環境に限界を感じ退職。その後も同じ業種の3社を転々とし、今の会社に落ち着いた。「転職で学ぶことも多かったが、職種だけでなく職場環境もきちんと吟味していたら、今の会社にもっと早く出合えていたかも」

 現在失業中という男性(48)は、若い頃に就いた仕事を続けておけば、と思うことがあるという。「いろんな職を転々としてきたが、技術が身に付かないうちに辞めた。会社から前職との一貫性を問われるとあたふたしてしまう」

 転職を前向きに捉える人もいる。会社員の男性(49)は「精神や身体に悪影響があるのなら自分の人生の喜びを優先した方がいい」。娘夫婦が転職した経験があるという女性(70)は「動機がはっきりしていればいいのでは。大切なのは本人が納得できるかです」と話した。

 営業職の女性(30)は8回の転職経験がある。転職の際は違う職場の人に相談し、自分がどうしたいのか具体的に伝えることを心掛けた。「納得のいくまで転職をし、今はいい職場に就けた」と笑顔を見せた。

      ■

 「今の若者は…」といった精神論で語られがちな若年層の早期離職だが、過去20年間、大きく増えているわけではない。厚生労働省の調査によると、大卒で新たに就職した人のうち入社1年目での離職率は10%台、3年目までの離職率は30%前後で推移している。

 背景には産業構造の変化や景気の動向などさまざまな事情がある。多摩大の初見康行准教授(人的資源管理)は、近年の特徴として若者の職業観の変化を挙げる。「昔は企業が従業員の人生をまるごと抱える代わりに転勤や仕事内容などその人のキャリアを自由にしてきた。今は会社に奉公しても報われるか分からない時代であり、仕事よりもプライベートを重視する傾向が高まっている」と話す。

 企業や若者はどう対応すべきか。「企業は入社前に実態を学生に伝えることが大切。若者も“売り手市場”に甘んじず、企業名で選ばずにインターンシップを多く経験するなど、マッチングの精度を自ら上げていくことが求められる」

 街頭で取材した学生たちにとって、人ごとではないテーマだ。陸上競技を続けてきた女子大学生は、継続することに価値があるとして早期の転職に否定的だったが「『次のステップに進む勇気があるなら、チャンスを活用した方がいい』という声に納得した」と考え方を改めたという。逆に男子大学生は「思い詰めて自殺するくらいなら辞めた方がいいと思っていたが、いろんな背景や考え方があると気づかされた」と語る。

 雇用形態は流動的になっている。揺れ動く若者の職業観は、時代のありようを映し出しているのかもしれない。(金沢皓介、吉田真紀、黒田加那)

   ◇    ◇

 西日本新聞社のインターンシップに参加した学生12人が、取材に協力しました。

 青江美智子、有賀光太、飯村海遊、小笠原麻結、加藤新、下村健太、竹添そら、中田大貴、奈良美里、野村拓生、三村舞、渡辺有規良 (敬称略)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ