米の小型核配備 抑止にならぬ危険な愚行

西日本新聞 オピニオン面

 いかなる規模であろうと核兵器の使用は断じて許されるものではない。

 米国が新型の小型核弾頭を搭載したミサイルを潜水艦に実戦配備した。今後も配備を拡大していくとみられ、国際社会に懸念が広がっている。

 従来の核兵器は強力で、使用すれば甚大な被害が想定されるため、実際にはなかなか使えないと目されてきた。小型化して爆発力を抑えれば被害を限定できるため「使える核兵器」とも呼ばれる。米軍が今回配備した小型核弾頭の爆発規模は従来の核弾頭を100とすれば5~7程度という。

 トランプ政権は、軍事力を増強するロシアや中国の脅威を強調し「抑止力強化」を配備の目的に掲げる。同政権が2018年に示した核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に沿ったものだが、あまりに独善的な主張と言わざるを得ない。

 なぜなら、核兵器使用のハードルを下げるだけでなく、中国とロシアの反発を招き、核大国間の軍拡競争に拍車を掛ける恐れが強いからだ。

 加えて、核開発で挑発する北朝鮮やイランに対し、米国が核の先制使用のカードを持つ狙いがあるとの指摘も出ている。米潜水艦に搭載されたミサイルの弾頭が小型核かどうか、外部から見分けるのは難しく、過剰反応を招く可能性もある。

 そもそも「使える核兵器」という発想そのものが危険極まりない。米国には直ちに配備を取りやめるよう求めたい。

 今回の小型核配備は、オバマ前大統領が唱えた「核なき世界」の路線を完全に覆すものだ。「力による平和」を志向するトランプ政権の核戦略は、世界の緊張を高め、不安を広げるばかりだ。

 ロシアとの間では、冷戦終結を後押しした中距離核戦力(INF)廃棄条約を昨年8月に失効させた。両国間に唯一残る核軍縮の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)も来年2月に期限が切れるが、ロシア側が求めている延長に応じる気配はない。

 米国のあるべき姿は軍拡競争の加速ではなく、新START延長を約束し、核軍縮に努めることだと強調したい。

 今年は広島・長崎への原爆投下から75年である。核保有国に軍縮を義務づけた核拡散防止条約(NPT)も発効50年の節目を迎え、5年に1度の再検討会議が4月から開かれる。

 日本は核の非人道的な被害を知る唯一の戦争被爆国である。その原点に立ち返り、米国に自制を促しつつ、国際社会に「核なき世界」の構築を積極的に働き掛ける責任がある。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ