林えいだいさん、推敲の跡 反戦つづった手書き原稿発見 識者「考え知る手掛かり」

西日本新聞 社会面 福田 直正

 福岡県田川市を拠点に活動した記録作家の故林えいだいさんが「兵士・庶民の戦争資料館」(同県小竹町)初代館長、故武富登巳男さんの半生と反戦平和の思想をつづった「聞き書き 武富登巳男伝 夜香花」の手書き原稿が見つかった。林えいだい記念ありらん文庫資料室(福岡市)の森川登美江室長は「えいだいさんの作品約60冊のうち手書き原稿は十数点しか確認されておらず、貴重なもの。えいだいさんの考えを知る手掛かりになる」と話す。

 昨年9月、登巳男さんの妻智子さんが亡くなり、長男で現館長の慈海さんが今月、遺品を整理中に見つけた。紺インクの万年筆で書かれており、全編に当たる400字詰め原稿用紙322ページ。燦葉出版社(東京)がワープロ書きした校正刷りも見つかった。

 林さんと武富さんは「異郷の炭鉱(やま)-三井山野鉱強制労働の記録」の共同出版(2000年1月)を機に交流を深めた。私費を投じて戦争資料を収集していた武富さんの活動に感銘を受けた林さんが約半年の間、連日自宅を訪ねて取材。旧満州(中国東北部)や東南アジアで軍隊生活を送った武富さんの戦争体験や、1979年に自宅を改造して開設した資料館についてまとめ、2000年8月に夜香花を出版した。

 原稿用紙には「行軍で一緒に歩いていた戦友が力尽きて倒れそのまま亡くなった」「絶望の余り気が狂って自殺する戦友を目の当たりにした」-など武富さんの生々しい体験が太い字でつづられる。随所に推敲(すいこう)の跡もあり、一文一文に込められた林さんの思いや考え方が浮かび上がる。

 燦葉出版社によると、原稿は刊行後に返却しており、武富さんに渡った経緯は不明という。慈海さんは「父が記念に譲ってもらったのではないか。両親の形見であり、戦争の不条理さを訴えた大先輩の足跡。資料館で大切に保管したい」と話している。

 原稿と校正刷りは資料館で開催中の企画展「朝鮮からの証言」に合わせて3月6日まで展示。午後1時半~同5時。水、木曜休館。来館の際は事前に連絡を。同館=09496(2)8565。 (福田直正)

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