密室法廷の違憲性言及焦点 「菊池事件」26日判決

西日本新聞 社会面 和田 剛 綾部 庸介

 1952年に熊本県で起きた殺人事件で、ハンセン病患者とされた男性が隔離施設の「特別法廷」で裁かれ、無実を訴えながら死刑となった「菊池事件」を巡り、検察が再審請求しないのは違法だとして元患者6人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、熊本地裁で言い渡される。原告らは、差別に満ちた特別法廷を違憲だと訴えており、判決がどう踏み込むのか注目される。

ハンセン病元患者ら「検察に再審請求義務」

 訴訟は、無実を訴えながら刑を執行された男性の遺族が「自身の子どもらに差別が及ぶ可能性がある」として再審請求に踏み切れなかったため、元患者らが2017年に提訴。検察官が再審を求めないことで「差別や偏見を解消する機会を奪われた」と訴えている。

 「男性には何度も会って家族のように思っていた」。原告で国立ハンセン病療養所菊池恵楓園入所者自治会長の志村康さん(87)=熊本県合志市=は、男性が死刑執行される3日前、1962年9月に患者専用の医療刑務支所の小部屋で面会していた。

 当時、全国の療養所入所者たちが、男性の再審請求を支援する運動を展開。熊本市の高校に通っていた男性の娘は、周囲に菊池事件のことを知られた影響もあり、退学を迫られていた。

 志村さんは最後の面会で、娘の県外への転校手続きが無事に済んだことを男性に報告。「『本当に良かった』と手を取り合って、にこやかに笑って別れたのが昨日のように思い出される」と振り返る。

 志村さんは、差別を恐れ、父の無実を信じながらも再審請求できない娘のこと、今なお家族に苦悩を強いる社会のありようを思いながら原告になり、声を上げてきた。

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 「建物には幕が張ってあった。一度、幕を開けて中を見ようとしたがすぐ追い出された」。原告の長州次郎さん(92)は、菊池恵楓園で男性の特別法廷が開かれた51~53年ごろの記憶を裁判で陳述した。

 傍聴もできない“密室”の法廷。男性は無実を主張したのに当時の弁護人は無罪を主張せず、問題の多い検察側の証拠を批判する手段も機会もなかった-。弁護団は、全ての被告人が公平で公開の裁判を受ける権利を保障した憲法37条1項に違反する、と主張する。

 最高裁は2016年にまとめた調査報告書で「特別法廷が患者の人格と尊厳を傷つけた」としたものの、違憲性や個々の裁判の当否には踏み込まなかった。

 訴訟で国側は「最高裁報告書は違憲性を認めていない」との立場を強調。再審を求めなかった検察の判断について「検察官の再審請求の目的は個別の国民の利益保護ではない」と主張し、そもそも男性と血縁関係のない「第三者」の原告らには損害賠償請求権もないと反論している。

 昨年7月に確定した熊本地裁でのハンセン病家族訴訟判決では、隔離政策を所管した厚生労働省だけでなく、差別解消の観点から文部科学省や法務省の責任も認めた。弁護団の徳田靖之共同代表は「われわれ法曹界全体に責任がある。特別法廷の違憲性に踏み込み、死刑になった男性や、ハンセン病患者らの尊厳を回復させる判決を」と力を込めた。 (綾部庸介、和田剛)

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