訪日客の減少 観光立国へ課題洗い出せ

西日本新聞 オピニオン面

 2020年に年間4千万人という政府目標に黄信号がともっている。訪日客誘致を推進する「ビジット・ジャパン事業」(03年開始)のことだ。

 地域経済に及ぼすマイナスの影響も危ぶまれる。それでも焦ってはなるまい。むしろ、この機会に受け入れ態勢の総点検に取り組むなど、観光立国への歩みを着実に進めたい。

 観光庁によると、今年1月の推計訪日客数は昨年同期比1・1%減の266万1千人で、4カ月連続で前年を下回った。

 韓国からの落ち込みが大きな要因だが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの感染拡大で中国の団体旅行が止まり、2月は大幅減が確実視される。日本での感染者増を受け、中韓以外からの訪日にもブレーキがかかっている。感染流行が長引けば、年間は昨年実績(3188万人)を下回る恐れがある、との観測も広がってきた。

 そこで提起したいのは、感染対策と同時に訪日客誘致の課題を洗い出し、見直しを進める冷静な作業だ。政府はこれまで、クルーズ船客の上陸審査の簡素化や空港での「自動化ゲート」(機械による個人識別)導入など、スムーズな受け入れ態勢づくりを推進してきた。

 その中で、入国者の健康をチェックする検疫がおろそかになっていないか。感染症の疑いがある人が見つかった場合の隔離や医療体制に不備はないか。水際対策を総合的に点検したい。今回のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での「船内隔離」の問題点などを検証し、教訓を導き出すことも大切だ。

 上陸した訪日客の安心・安全を確保することも欠かせない。昨秋の東日本の大水害では多くの旅行者が避難に戸惑ったり、空港や鉄道駅などで立ち往生したりと混乱が広がった。

 これを踏まえ、政府は非常時の訪日客支援を強化する検討会を設け、多言語での情報発信や相談窓口の拡充策などを探っている。そこでは、今回のような感染症も想定し、風評被害や特定の外国人への差別が広がらないよう正確な情報を伝える。また感染予防の知識や医療支援の仕組みを周知する-といった施策も盛り込むべきだろう。

 九州は韓国客の激減に続き、中国のクルーズ船寄港が当面望めなくなったことで観光業に暗雲が漂う。そこに着目すれば、アジア近隣以外からの誘客を促進し、訪日客の多様化を図ることも大きな課題と分かる。

 新型ウイルスの一刻も早い封じ込めを図りつつ、一連の事態を観光立国への試練と捉える。そうした発想を官民で共有し、数値目標にとらわれない地道な取り組みを進めたい。

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