出産の立ち会い よく考えて【しもじもの話】

西日本新聞 くらし面

 「立ち会えてよかった。立ち会いって大事ですね」。第1子誕生を喜ぶ環境大臣の声がニュースになりました。

 立ち会い出産とは、産婦以外の家族が分娩(ぶんべん)室に入り、共に赤ちゃんの誕生を迎える出産スタイルのことです。全国調査によると夫の立ち会いは2006年が39%、13年は59%。年々増えてきています。

 「不安を和らげるためにそばにいて」「誕生の瞬間を一緒に」という妻の希望や、「ご主人の励ましがあると安心してお産を迎えられる」「夫婦の絆が深まる」「父親としての自覚が芽生え、子育てに積極的になる」といった医療者からの説明に、「そうなんだ」とその気になって分娩室に入る夫が多いようです。

 実際、希望すれば立ち会える産院が増えています。「産む姿を見て感動した。ぜひ立ち会いを勧めます」という経験者の声も後押ししています。

 でも分娩室は緊張感の高い非日常の空間です。血液や羊水の独特なにおい。医療機器を使った処置、会陰切開のはさみの音…。産婦は産むのに必死ですし、ホルモンが分泌されるので、そうした現場を乗り越えられるようにできています。夫はそうではありません。顔面蒼白(そうはく)でしゃがみ込んでしまい「こんなはずじゃなかった」と後悔する男性が少なからずいます。

 そうなれば「頑張っている妻を最後まで励ませなかった自分は情けない」と否定的な感情につながってしまいます。そうした人は心の内を隠してしまいがちです。立ち会い出産についてのマイナス情報や後悔の声は、なかなか表面化しにくいようです。

 私は泌尿器科医ですから、勃起(ぼっき)不全(ED)や性欲減退を起こした男性から相談を受けることがあります。その中には「実は出産に立ち会ってからです」と打ち明ける人もいるのです。

 たとえ立ち会いができなくても、分娩室の前でそわそわしているだけでも、わが子を見れば妻への感謝と父親としての自覚が生まれます。時の大臣の“ポエムな発言”に惑わされず、立ち会い出産のメリット、デメリットをよく知った上で選択してください。(泌尿器科医・池田稔)

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