「買い物難民」増加・・・高齢化率41.7%の団地 福岡市の取り組み

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 「買い物難民」が増えている。高齢化や運転免許証の自主返納、商店街の店舗の廃業で、日用品の購入に苦労する人たちだ。国の推計では824万人(2015年)にまで増え、過疎地のほか都市部でも目立つという。各地が対策に悩む中、福岡市では買い物に困っている地域と、これに協力する企業を橋渡しする支援事業が始まった。

 「魚がきれいかねえ」「レタスはないと?」

 13日午後、福岡市博多区の下月隈団地であった移動販売。住宅街の公園に車が入り、食料品や日用品約300点が並べられた。高齢者を中心に約80人が訪れ、品定めを楽しんだ。

 実施したのは地元の自治会と、福岡県古賀市の会社「大輝」。同社は2年前に移動販売を始め、冷蔵車で肉や魚といった生鮮食料品も届ける。

 団地は約2200人が住み、高齢化率は41・7%(18年9月)と福岡市全体の20%台前半を大きく上回る。坂を上った丘に住宅が広がり、買い物への支援を求める声が多かった。

 移動販売は月に2回。訪れた宮田静子さん(80)は「10年ほど前に交通事故に遭い、坂の上り下りはきつい。(販売車が)来てくれると助かります」と話した。

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 福岡市の取り組みは19年度に始まった。まず、買い物支援の協力団体を募って登録。並行して、助けを求める地域を募った。市の委託を受けた市社会福祉協議会の「買い物支援推進員」が両者をつなぎ、どの登録団体が援助するかを決める。

 現在は16企業・団体が名を連ね、五つの地域が支援を受ける。登録に手を挙げたのは、移動販売や宅配を手がける食料品店やコンビニのほか、店舗に車で無料送迎する葬儀社、介護事業者など。葬儀社は暦の上で友引の日は葬儀が少なく、バスを出すようになった。

 今回の試みが実現したのは、市社協が既に、一部地域の要望で葬儀社による無料送迎を行っていた点がある。これを基に、政令市で企業・事業所が多い特徴も生かし、対象地域や支援の種類を市内に広げた。市地域福祉課の中村将道課長は「民間活力と地域のまとまりの力を生かそうと、この形にした」と話す。

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 買い物支援は主に、移動販売や宅配、スーパーへの送迎のほか、朝市の開催、新たな店の設置が多い。だが、それぞれに課題もある。

 移動販売は品不足や割高になりがち。宅配は商品を直接見て選べない。朝市や新店舗は準備や費用負担が大きい。さらに、企業が高齢者の多い地域で支援に入ろうにも、住民とつながりが薄いと、消費者被害などを警戒されるという。

 その点、福岡市の取り組みは地域が助けを求めるため、事業者が入り込みやすい。公園や市営住宅の広場といった公共空間も市の仲介で使いやすい。

 市と市社協は下月隈団地での移動販売で、登録団体の後押しにも手を打った。大輝は「移動販売とはいえ価格はあまり高くできない。経営は厳しい」(渡辺弘美会長)。このため、販売日は近くで高齢者の集まりがある日にした。地域で「買い支える」形という。

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 警察庁によると、免許証の自主返納は約42万件(18年)で、09年の約8倍に増えている。一方、小売業は店舗の大型化と小規模店の減少が続く。大型店は車での来店を想定した立地が多く、高齢者に不便になりがち。買い物難民はさらに増える恐れがある。

 こうした現状から、行政も対策を進める。買い物支援をする企業に業務委託や助成をしたり、直営で担ったり。成功例もある。

 岐阜県飛騨市は移動販売の事業者に車の購入費や燃料費、人件費を助成。仕入れ先を個人商店にし、商店街にも利益が出ている。住民のアイデアという。

 兵庫県神河町では、閉店したスーパーが再生した。町が旧店舗と敷地を取得。これを、住民と企業の出資で発足した会社に無料で貸し、会社側が営業を再開した。ともに行政と企業、住民が連携した形だ。

 一方、公的な補助が終わると支援が途切れる例も。継続できるかが鍵になる。

 朝市の企画、運営に関わる一般社団法人「コミュニティシンクタンク北九州」(北九州市)の西村健司理事は「どんな地域にも対応できる対策はなく、それぞれの地でニーズを見極め、個別に支援の形を考えることになる。行政の補助がなくても続く仕組みづくりも大切。そのためにも、住民は受け身でなく協力態勢を取ってほしい」と語る。 (編集委員・河野賢治)

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