Uターン就職、交通費が壁・・・ライブ中継で合説 意外な人気に驚きも

西日本新聞 佐賀版 金子 晋輔

 県出身の大学・高校生の県外就職率が昨年43・1%と全国で3番目に高い佐賀県。県外への大学進学率も高く、他県に移り住んだ学生たちが地元に戻らないことに、県や地場企業が悩んでいる。実は、Uターン就職の大きな壁となっているのは企業説明会や面接などでかさむ交通費だ。人材流出阻止に本腰を入れ始めた県の取り組みを追った。

 15日、九州の玄関口・JR博多駅(福岡市)。すぐそばのオフィスビル一室に佐賀県内の30社の採用担当者が集まった。会場をのぞくと、担当者が小型カメラに向かって自社のPRをしていた。

 県が初めて企画したウェブ上の合同企業説明会(合説)。誰でも参加できるが、県がターゲットにするのは県外在住の県出身者だ。あらかじめ決められた時間枠ごとに企業側がライブ中継することで、学生は場所を選ばず、経済的な負担もなく、企業側の生の声を聞くことができる。チャット形式で質問も可能だ。

 佐賀県の19年の県外就職率は全国で最も高い青森(45・6%)、2番目の鹿児島(45・1%)に続く。同年の県外進学率も79%で全国で5番目に高い。どちらもこの10年間はほぼ横ばいで高止まりしている。

 県によると、今春卒業見込みの大学生を対象としたUターン就職に関する大手人材会社の調査で、障害のトップは「交通費」(26%)だった。「距離・時間」が14%で続く。地場大手建設会社の採用担当も、在京の学生などから交通費の悩みを聞くという。県産業人材課の小柳圭史主査は、ウェブ合説の狙いを「まずは地元にどんな企業があるのか知るきっかけにしたかった」と語る。

 採用側の受け止めはどうか。佐賀銀行の担当者、伊東拓朗さん(28)は「対面式ではないので、当初は反応が不安だった」。学生の表情を見ながら話す普段の合説と異なり、話し相手はカメラ。手応えをつかめないまま会社説明をした。しかし、心配をよそにチャットで質問が次々と寄せられた。中には「人工知能(AI)の発達で銀行は生き残れるのか」といった突っ込んだ問いもあったという。「時間が足りず、全ての質問に答えられなかった」と意外な人気に驚く。

 「実際の合説では周囲に遠慮して質問しづらいという学生は多い。顔が見えないウェブの方が質問しやすかったのかも」と話すのは松尾建設の満身(みつみ)梨沙さん(29)。札幌市からの参加もあったという、データ管理会社「佐賀IDC」(佐賀市)の大沢陽子さん(37)は「東京でせわしく働くよりも、自然豊かな地方で、残業せずに働きたいと考える学生が増えている」と語る。

 県によると、ウェブ合説には延べ約2千人が参加。県内の37%に対し、九州の他県は30%、九州外が33%だった。近年は合説参加者の減少傾向に悩む企業は多く、小柳主査は「ウェブの方が今の学生心理にうまく刺さった」と手応えを見せる。

 県は「二の矢」も放つ。合説や採用試験の交通費補助事業を新年度から始める。計約2700万円計上し、一人1回3万円を上限に、計3回までの補助を想定。就活する4年生だけではなく、インターシップに参加する3年生以下も対象とする。これまではUターン就職した人への奨励金(一人10万~30万円)を予算化していたが、「入り口」の敷居を下げることに重点を移す。

 各企業の採用情報発信が3月に解禁となり、本格化する今年の就職活動。人手不足による売り手市場が続き、優秀な人材確保に企業間の競争が激しさを増すのは間違いない。県産業人材課は「より早い段階で、地元の佐賀に目を向けてもらいたい」と意気込む。県の新たな取り組みが実を結ぶか。勝負の夏を迎える。(金子晋輔)

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